2023-01-01から1年間の記事一覧
抜群に面白い日本詩史の本があったので、読書メモ代わりに紹介しようと思う。 www.amazon.co.jp 亀井俊介『日本近代詩の成立』南雲堂、2016年 亀井俊介(1932-2023年)は『アメリカン・ヒーローの系譜』や『対訳 ディキンソン詩集』などで知られる、比較文学…
以下、独断と偏見に基づきエリオット『荒地』(1922年)の登場人物で誰が一番強いかを決める。ただし一般人レベルのDランクとそれ未満のEランクは列挙していたらキリがないので、ある程度枝刈りした。 和訳は基本的に岩崎宗次訳『荒地』(岩波書店、2010年)…
A. 一行はミニシアターに入ると、受付の鬼が「バグダッド・カフェあるよ(笑)」と言いました。 エモあるよ(笑)は「もう見飽きたんだよな(笑)」と言いました。 一行はシアターへ入り、バグダッド・カフェを鑑賞しました。 エモあるよ(笑)|惑星ソラリ…
1. 貞操逆転 すばらしい あ 鳥だ机を撫でるゆにゔぁーさるの鳥を捨て塔の方へ (31文字に)
最近、こういうサイトを作った*1。 comonmusic.com 発端は「日本で唯一の、ポップス専門誌。」を標榜する怪しげな同人雑誌『白旗』である。これは2022年12月に発刊した出来立てほやほやの雑誌で、縁あって私は創刊号に「ピチカート・ファイヴと幻想の廃墟」…
1:以下、名無しが深夜にお送りします HACHIMAN「 おれが今日 ここに来たのは 偶然が重なった結果というべきで なにも証しがあったからではない ただ毎夕 鳥たちの喃語に耳を傾け 河底をあるく幾千の死馬の群れを率いたおれらであってみれば やはり単なる偶…
どうしてこれが入門書ってことになっているんだ。 はじめに 三輪哲二・神保道夫・伊達悦郎『ソリトンの数理』岩波書店、2007年 T. Miwa, M. Jimbo, E. Date, M. Reid, “Solitons: Differential equations, symmetries, and infinite-dimensional algebras”, …
wagaizumo.hatenablog.com wagaizumo.hatenablog.com 上の記事から漏れたこと、あるいはその後勉強して気になったことを寄せ集めた。随時更新予定。ただし現在進行形で勉強しているので、今後内容がガラリと変わる可能性がある。 KdV方程式の一般解 KP方程式…
wagaizumo.hatenablog.com wagaizumo.hatenablog.com wagaizumo.hatenablog.com ようやく量子群について勉強することができる。12000文字。 量子化という病:非可換幾何学の夢 文献A:量子群の前に読むべき表現論の教科書 文献B:日本語で読める量子群の教科…
私は論文 [6] を書いた後,この分野を離れました.お話ししたことはそこまでの歴史です.そしてその後もたくさんの歴史がありました.大変面白いことがたくさん起こりまして,それは東京で開かれた会議で見ることができました.しかし,あれは本当にエキサイ…
リーマン対称空間の不連続群論では 100 年以上にわたって広く深く研究が発展してきたが,それとは対照的に,1980 年代当時は非リーマン等質空間の不連続群論に興味を示す研究者は殆どおらず,孤独ではあったが何をやっても新しい発見になった. (小林俊行『…
耳は少しずつ形作られてゆく。三世代か四世代の間に、ある民族の器官が変わってしまうのだ。今から150年も経てば、あなたはきっと私が正しいことが分かるでしょう。 (ヴォルテール、1735年) 本稿は数学史を12000文字程度で概説したものである。あまり具体…
そういうアレ*1が流行ったときに作った画像です。俺からJazzをとったら何が残る――。 エリック・ドルフィーは大恐慌の前年1928年に生まれました。幼少期、ポピュラー・ミュージックとしてスウィング・ジャズを摂取しながら、地元のオーケストラでクラリネット…
日本ではYOASOBIの〈アイドル〉が、そして〈アイドル〉論が流行っているそうです*1。英語圏への〈アイドル〉進出。 しかしアメリカには……マーク・ターナーがいる!!!!!! *1:『『アイドル』の異様さの評価』の異様さの評価 ~『アイドル』のラップパート…
増田聡『聴衆をつくる』(青土社、2006年) www.amazon.co.jp 音楽批評、というよりも「音楽批評」批評の本。 「ポピュラーミュージックを学問の対象として初めて扱ったテオドール・アドルノは、聴くことの研究を標榜して聴く人を研究していないか?」(第一…
結論から言うと、贖罪思想とメシア的なものへの祈りがよく描かれているからのようです。 www.youtube.com 以下、諸々の理由で頓挫したテクストを公開する。教訓は、「勢いで書ききるかよく調べてから書け」だ。本文4600文字。 そのうち「私たちは《キリスト…
はじめに 『旧約聖書』(The Old Testament)あるいは『ヘブライ語聖書』と今日呼ばれるテクスト群*1。その「非神学」的な批評研究は、スピノザ(1632-1677)などの先駆的な仕事を経て、18世紀啓蒙の時代に始まったという*2。 いわゆる「モーセ五書」(創世…
最近書いたもの ここ一週間はずっと「小説家になろう」「カクヨム」向けに四万文字の論考を書いていた。 kakuyomu.jp 無から生成したわけではなく、次のブログ記事を下敷きにしている。 「転生オリ主」の出現――「憑依」と「オリ主」の落ち合うところで/「ト…
暗黒批評……僕のやってることですよ(笑)。ただのキャッチフレーズなんですよね。もともとゴシック・ロマンスやフィルム・ノワールが凄い好きでした。それを日本語にすると、暗黒小説や暗黒映画になるらしいと。ああ暗黒舞踏もあるなとか気づき始める。暗黒…
引き続き『ネギま』の二次創作(からWeb二次創作シーン)について考えよう。 <前| wagaizumo.hatenablog.com コラムC:『ネギま』二次固有の事情 2010-2012年:にじファンの時代 2012年-:ハーメルンの時代 後書き コラムD:いくつかの補足 [reference] …
副題:軽く『ネギま』のおすすめSSを紹介するはずがいつの間にかWeb二次創作小説をめぐる三部作になってしかも前後編に分割していた件 前書き きっかけはなんてことなかった。ある日ふと「そういえばこれまで『魔法先生ネギま』(2003-2012年、以下『ネギま…
「性」は神話の時代から、ずーっと、ずぅーっと、私たちの想像力を駆り立ててきた。
追記(2023/4/30):20000文字ほど加筆修正した増補版が以下に掲載されています。 kakuyomu.jp 前書き 「小説家になろう」の「異世界転生」を準備したのは2008-2012年の「二次創作」*1シーンにおいて流行した「転生オリ主」(現実世界からやってきた原作には…
エッセイを書こう、と思った。しかし最初の二段落で書くことが無くなった。 二人羽織で文章を書こうと思った。でも人からお題をもらうのは億劫だ。 というわけで「AIのべりすと」にご協力いただいた。 「AIのべりすと」の利用を明記した小説は一次創作(なろ…
今回は私が個人的に気に入った作品たちを一気に紹介する。次のユーザーページを参照*1。 https://mypage.syosetu.com/275205/ ブックマーク「Theta」に入れたものが今回言及するお勧め作品。ブックマーク「Lambda」に入れたものはリマークが必要そうなものの…
以前こういう記事を書いていた。 2021年 グリッチこもごも(ゲームのバグ/RTA/TASに関するニュース) - 古い土地 読んでて感心した。一本で網羅されているから常にアンテナを張る必要がなく、自分にとっての当たり率が高い(自分が書いてるので)。この手…
タイトル案 古い名、愛の紛失 傷、いくつかの 転生再び 僕のヒーロー/ファッキンアカデミア ヒーローの研究 注:『緋色の研究』 転生したら「古い土地」だった件
奇しくもここに、「夜」「実存」「文学」をテーマとする三組のミュージシャンが揃った*1。 系統図を描くと次のようになる。 セリーヌ『夜の果てへの旅』(1932年) ┃ ┃(実存主義文学のロック化) ┃ 高橋徹也『夜に生きるもの』(1998年) ┃ ┃(ポップ化/サ…
今回は『ギスギスオンライン』(2016年)の批評・レビューを行う。おまけとして『不死なるプレイヤーズギルド』(2018年)も紹介する。13000文字あるので気長にお付き合いいただきたい。 批評の文脈、専門用語について不明な点は前回の記事を参照のこと。 な…
詩を読みあぐね原稿を三か月放置していたら、期せずして追悼文となってしまった。彼の人と鳥の記憶に捧ぐ。 ……ややや 何たる恥知らず! 「鳥」の字がこんどは「馬」になり変っていく…… ――天沢退二郎「鳥について」(『ノマディズム』)