Analysis on Eric Dolphy ――エリック・ドルフィーの楽理的分析 part 2 〔作曲編〕
じゃあ、行こうか、きみとぼくと、
薄暮が空に広がって
手術台の上の麻酔患者のように見えるとき。
我々はそれと知らずに、それを行う
――出展不明
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今回はコンポーザーとしてのドルフィーを研究する。音源については次のプレイリストを参照。
- 前提と約束
- いくつかの曲分析
- 「Les」 from 『Outward Bound』1960
- 「Prophet」 from 『Live at the Five Spot vol.1』1961
- 「Miss Ann」 from『Far Cry』1960
- 「Miles' Mode」 from『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』1961
- 「Brazilia」 from『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』1961
- 付録:アレンジャーとしてのドルフィー/クラシックへの接近
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時オカ日記③(迷いの森 SRM編)
SRM実践第二弾。
2022年2月現在、「時のオカリナ」のぶっ壊れバグSRM(Stale Reference Manipulation)の50%はコキリの森で行われ、残りの50%は迷いの森で行われる。*1
今回は迷いの森で行われる多種多様なSRMを実践してみよう。前回の記事と合わせて時オカの主要なSRMはほぼ紹介できたと思う。
<前|
比較すると
- コキリの森LNSRM:ファイルネームを変えるだけで同じセットアップから様々な効果が得られること、ゲーム開始直後に行えることが利点。1回のセットアップが長く様々な技術を要求されること、1つのセーブデータで1つの効果しか得られないことが欠点。
- 迷いの森SRM:各SRMごとにセットアップ・角度調整が違うこと、ある程度アイテムを要することが欠点(最速でコキリの森タイトルファイルSRM後)。ファイルネームに関係なく行えることが利点。
[専門家向けの注意]
複数セットアップがある場合はいくつか提示するか一番簡単なものだけ紹介した。必ずしも最新や最速でないことに注意。
- 始める前に
- [バージョンの話]
- [必須事項]
- [推奨事項]
- [目標設定]
- 準備1:基礎知識
- ヒープ調整の基礎(迷いの森編)
- ESSターンについて
- アイテムの補充(練習用)
- 準備2:無の取得法
- 余談:押し出し高速移動
- Age Change SRM
- [前提]
- [ヒープ調整]
- [角度調整]
- 性質
- 補足:Current Cutscene SRM
- Quest Status SRM
- [前提]
- [ヒープ調整]
- [角度調整]
- Item Slot SRM (Inventory SRM)
- [前提]
- [ヒープ調整]
- [角度調整]
- 補足:Butterfly Rewards SRM
- その他の魚利用SRM
- F boots SRM
- [前提]
- [ヒープ調整]
- [角度調整]
- 性質
- Grotto SRM (adult)
- [前提]
- [ヒープ調整]
- [位置調整]
- 性質(グリッチエントランス)
- Grotto SRM (child)
- [前提]
- [ヒープ調整]
- [位置調整]
- 付録:Switch NSO版時のオカリナとSRMの現状
*1:実際のところ5~10%ぐらいはゾーラ川も関わる。今回紹介する中ではButterfly SRMやF Boots SRMなど。SRM/ACE最初期(~2019年12月)と比べゴロンシティはほとんど見なくなった。
Analysis on Eric Dolphy ――エリック・ドルフィーの楽理的分析 part 1 〔非・楽理編〕
私たちは二人だつた。私はそれをはつきり言える
――マラルメ「散文」――
- 序:研究への
- タイム感覚
- 音色
- 結:偽史を編む
- [reference]
序:研究への
ビバップ以降のジャズミュージシャンはみな研究家の側面を持ち合わせている。まず「勉強」しないとジャズはできない。
もちろん、アドリブの勉強をすればそれだけで良い音楽を作れるわけではない。1940-60年代は不思議な時代で音韻情報の進化と音楽の変化がなぜか同期していた(少なくともそう錯覚させられた)。その魔法が解けて久しい。
研究はたいてい一人で、あるいは内輪で行われる。研究の総量に比して研究書のような形で世に出回る割合は想像以上に少ないのだろう。不特定多数に伝えるのはそれだけで余計な労力を要するし、「自分が頑張って研究した結果に金だけ払ってタダ乗りされるのは許せない」という感情もある。ジャズはかつてコンペティションの音楽であったし、ミュージシャンはお互い潜在的な商売敵であるから。
とはいえインターネット以後はぼちぼち趣味人・業界人による情報公開が進んでいる。
この記事シリーズの主題はエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)である。1928年生まれ1964年没。アルトサックス・フルート・バスクラリネットの木管マルチプレイヤーでそのスタイルから独自の地位を築いていた。
しかし今「Eric Dolphy Analysis」で検索してもロクな情報が出てこない([reference]参照)。ハードバップとフリー・モード以降のジャズに挟まれた過渡期の音楽家を分析することには独特の面白さがあり、言語化すべきことも多いと思うのだが。
この状況に一石を投じるのが本稿の目的である。
筆者は一時期ドルフィーのトランスクリプションと向き合い、アドリブに関して次のような音韻的特徴を抽出した。全て彼の演奏が「Out」に聞こえる所以である。*2
採譜と分析を復習せずに見切り発車で書き始めたので、後に修正する可能性在り。
- チャーリー・パーカー(Charlie Parker)以来のビバップ的なクロマティック・アプローチ(chromatic approach)によるスケール外の音の挿入。
- 通常のメロディラインから一部オクターブを上下させることによる跳躍の創出。また素のラインからして跳躍が大きめ・多めである
- ハードバップ的なコードスケール(横の流れ)の上でビバップ的な縦の動き・疑似的なコードの提示をする。結果としてテンションを含む和音がメロディに浮かび上がる。
- 著しいモードチェンジ。リディアン・クロマティック・コンセプトの影響?
- 著しいリハーモナイズ。代理コード(4度圏で対角線上にあるコード)をm7などでも平気で使う。
作曲に近い方面で言えば次のような特徴がある
- ドミナントセブンスの探究:裏コード、様々なコードスケール、avoidとされる11thやmaj7thの使用
- ブルースの研究
- 現代音楽における12音技法の研究
上記のような定量的分析をpart 2以降で行っていく予定である。
part 1では(採譜に情報が残らない)印象批評的な側面を片付けておきたい。ミュージシャン論というよりはプレイヤー論である。これがまたエリック・ドルフィーの特徴づけには必要不可欠なのだ。
あるいは「音響の時代」である現代においてドルフィーの可食部はここだけかもしれない。
今回出てくる音源のうちspotifyにあるものは次のプレイリストへまとめた。
*1:このエピグラフは入沢康夫『古い土地』「死んだ男」からの孫引き(おそらく入沢の私訳)。仏題「PROSE」に対して「散文」を当てたのは自然な選択に思えるが、実は誤訳に近い。というのも「PROSE」はフランス象徴詩人の散文詩でなく極めて技巧的な定型韻文詩だから。
渡辺守章訳『マラルメ詩集』では「PROSE」を「続誦」と訳し、カトリックの聖歌の一種「sequentia」に起源を求めている。メリスマ(1音節に対して複数の音符を当てること)の強いアレルヤ唱に挿入する形(トロープス)で散文詩形式の説明的歌詞が加えられた、というのがマラルメの時代にもあったであろう俗説。9世紀頃に始まり12世紀には韻を踏むようになっている。
この先「死んだ男」しか登場しない。「二人」であることもない。ミューズは存在しない。
*2:筆者にこう読めるというだけで、当時彼が運用していたアドリブ生成理論はまた違うだろう。チャーリー・パーカーの研究で有名な濱瀬元彦も散々採譜をこねくり回したあと「パーカーがここまで複雑な機構で考えていたはずがない。もっと肉体的原理があったはずだ」(要約)と述べている
時オカ日記②(コキリの森 LightNode SRM編)
前回は基本的なグリッチを履修した。
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今回は「無を取得」=SRM(Stale Reference Manipulation)やACE(Arbitrary Code Execution:任意コード実行)を実践してみたいと思う。
発見(2019年10月)以来とんでもないスピードで発展したSRM。ここ1年の間にも着実にアップデートが進められた。
2022年2月現在では「Any %」の節で紹介するLightNode SRM(2021年3月発見。以下LNSRMとも記す)のセットアップを1つ覚えるだけで
- クレジットワープ(Any%)
- ガノン城崩壊後ワープ(Defeat Ganon)
- 死亡後タイトル画面でセーブし大人リンク+タイトルファイル読み込み(No WW)
- 子供リンクでタイトルファイル読み込み
- デバッグメニュー呼び出し
- アーウィン呼び出し
が可能になっている。初心者がコキリの森でのSRMを習得するまで5-10時間かかるだろうが*1、その価値はありそうだ。
これでも以前よりは簡易化しているし使用可能なハードも多い。SRMに挑戦するなら割と今がおすすめ。speedrun.comのメインカテゴリでいうと「Any%」「Defeat Ganon - SRM」「No Wrong Warp - SRM」の3つは走れるようになる。
「All Dungeons - SRM」や「100% - SRM」で使われる迷いの森における各種SRMはまた別稿で扱う予定。
|次>
- 始める前に
- [バージョン・ハードの話]
- [理論の話:reference]
- Any%
- ①ファイルネーム入力
- ②55ルピーを集める
- ③ロードゾーン跨ぎ~Return A
- ④Return A後の移動
- ⑤WWT
- ⑥カメラロックSRM
- 譜面
- ⑦角度調整
- 補足:Filename LNSRMの別セットアップ/Switch用セットアップ
- No Wrong Warp – SRM
- Defeat Ganon – SRM
- 100% NSR / アーウィン
- 付録1:目的別ファイルネーム
- 付録2:その他のSRMカテゴリとLNSRM
- 付録3:奇妙なLNSRM
*1:Lunge Storage以前の時の扉抜けと同様に、ここの敷居の高さは否定できない。色々出来るようになることをモチベーションに練習してほしい