古い土地

暗い穴

φ:音楽

日記:音楽批評について/高橋徹也について/活動報告

最近、こういうサイトを作った*1。 comonmusic.com 発端は「日本で唯一の、ポップス専門誌。」を標榜する怪しげな同人雑誌『白旗』である。これは2022年12月に発刊した出来立てほやほやの雑誌で、縁あって私は創刊号に「ピチカート・ファイヴと幻想の廃墟」…

エリック・ドルフィー生誕95周年メモリアルバーベキュー

そういうアレ*1が流行ったときに作った画像です。俺からJazzをとったら何が残る――。 エリック・ドルフィーは大恐慌の前年1928年に生まれました。幼少期、ポピュラー・ミュージックとしてスウィング・ジャズを摂取しながら、地元のオーケストラでクラリネット…

日記 現代ジャズの勉強① Mark Turner

日本ではYOASOBIの〈アイドル〉が、そして〈アイドル〉論が流行っているそうです*1。英語圏への〈アイドル〉進出。 しかしアメリカには……マーク・ターナーがいる!!!!!! *1:『『アイドル』の異様さの評価』の異様さの評価 ~『アイドル』のラップパート…

読書メモ:増田聡『聴衆をつくる』

増田聡『聴衆をつくる』(青土社、2006年) www.amazon.co.jp 音楽批評、というよりも「音楽批評」批評の本。 「ポピュラーミュージックを学問の対象として初めて扱ったテオドール・アドルノは、聴くことの研究を標榜して聴く人を研究していないか?」(第一…

放棄稿:『可愛くてごめん』が流行った理由は? 調べてみました!

結論から言うと、贖罪思想とメシア的なものへの祈りがよく描かれているからのようです。 www.youtube.com 以下、諸々の理由で頓挫したテクストを公開する。教訓は、「勢いで書ききるかよく調べてから書け」だ。本文4600文字。 そのうち「私たちは《キリスト…

日記 最近書いた/読んだ/聴いたもの

最近書いたもの ここ一週間はずっと「小説家になろう」「カクヨム」向けに四万文字の論考を書いていた。 kakuyomu.jp 無から生成したわけではなく、次のブログ記事を下敷きにしている。 「転生オリ主」の出現――「憑依」と「オリ主」の落ち合うところで/「ト…

読書メモ:後藤護『黒人音楽史 奇想の宇宙』

暗黒批評……僕のやってることですよ(笑)。ただのキャッチフレーズなんですよね。もともとゴシック・ロマンスやフィルム・ノワールが凄い好きでした。それを日本語にすると、暗黒小説や暗黒映画になるらしいと。ああ暗黒舞踏もあるなとか気づき始める。暗黒…

ヨルシカ、YOASOBI、夜に生きるもの(高橋徹也)

奇しくもここに、「夜」「実存」「文学」をテーマとする三組のミュージシャンが揃った*1。 系統図を描くと次のようになる。 セリーヌ『夜の果てへの旅』(1932年) ┃ ┃(実存主義文学のロック化) ┃ 高橋徹也『夜に生きるもの』(1998年) ┃ ┃(ポップ化/サ…

レビュー:Charles Mingus - The Black Saint And The Sinner Lady(黒い聖者と罪ある女)

www.youtube.com 数年ぶりに聞きなおして呆れ果ててしまった。 過度にドラマティック。過度にエモーショナル。過度にロマンティック。 もっと言えば、過度に土臭く、ブラックで、書き譜的で、構成的で、スパニッシュで、チャールズ・ミンガス臭がして、とき…

Analysis of Eric Dolphy ――エリック・ドルフィーの楽理的分析 part 2 〔作曲編〕

じゃあ、行こうか、きみとぼくと、 薄暮が空に広がって 手術台の上の麻酔患者のように見えるとき。 ――T. S. エリオット『J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌』(1910-1911) 岩崎訳 我々はそれと知らずに、それを行う ――出展不明 <前| wagaizumo.hatenab…

Analysis of Eric Dolphy ――エリック・ドルフィーの楽理的分析 part 1 〔非・楽理編〕

私たちは二人だつた。私はそれをはつきり言える ――マラルメ「散文」―― *1 序:研究への タイム感覚 音色 結:偽史を編む [reference] 序:研究への ビバップ以降のジャズミュージシャンはみな研究家の側面を持ち合わせている。まず「勉強」しないとジャズは…

【楽曲雑考】小沢健二 - 飛行する君と僕のために

書いていたらいやに辛辣になった。本稿に誹謗中傷の意図はありません。 www.youtube.com 以下にコード採譜がある。 飛行する君と僕のために (歌・作詞・作曲:小沢健二) - ChordWiki : コード譜共有サイト 元々2016年のツアー『魔法的』で披露された曲。20…

「AIのべりすと」に歌詞は書けるか〔高橋徹也編〕

「真っ赤な車」(学習前) クソみたいなj-pop仕草をやめろ [アブスト] 「AIのべりすと」に(筆者が望むレベルの)歌詞は書けない。 はじめに 「AIのべりすと」は少し前から流行っている文章作成支援ツールです。インターネット上の文章を文庫本174万冊分(公…

【楽曲解説】高橋徹也『夜に生きるもの』(コード進行で見る高橋徹也②)

以前、このような記事を書いた。 wagaizumo.hatenablog.com 高橋徹也の楽曲によく現れるコード進行を系統分析し、彼のトレードマークになっている奇妙な和声が具体的に何なのか明らかにした(つもりである)*1。 しかし『コード進行で見る高橋徹也』は長い上…

【楽曲解説】ピチカート・ファイヴ - これは恋ではない

『ベリッシマ』期の小西康陽はどのような実験を行っていたのだろうか? その一例を作曲の視点から明らかにしよう。得られる教訓は次の通り。頻繁に行われる脈絡のない転調という小手先の技巧はしなくてよい。 ピチカート・ファイヴ - これは恋ではない - 動…

【楽曲解説】John Coltrane - Naima のオリジナル版について

「Naima」はJohn Coltraneがアルバム『Giant Steps』(1960年)で発表した美しいバラードナンバーだ。今では歴としたジャズスタンダードであり、Coltrane本人も手応えを感じていたのか、晩年までたびたび録音を残している*1。 www.youtube.com シンプルなメ…

ピチカート・ファイヴ論考2: 歌詞の具体例 / 録り音 / DJ感覚

前回の記事の補足です。 wagaizumo.hatenablog.com この記事中間部の論証で「歌詞の面から見ても明らかにピチカートファイヴは人さらいの音楽なんだよ」と納得するのは難しいでしょうから、曲を具体的に挙げていきます。

ピチカート・ファイヴ論考1: 人さらいの音楽 / "誤解" / 階級闘争

コンピレーションプレイリスト『配信向けのピチカート・ファイヴ その1高浪慶太郎の巻/その2小西康陽の巻』がリリースされました。小西康陽作曲のプレイリストはベスト盤・オリジナルアルバムに収録されていないミニアルバム・シングルの曲が多く選ばれてい…

コード進行で見る高橋徹也

追記(2021/11/7):本稿は辞書的な内容なので、先に次の記事を読むことを推奨する。 wagaizumo.hatenablog.com ここに40件(2021/10/27現在)のコード譜がある。 高橋徹也 - ChordWiki : コード譜共有サイト 今回はこの採譜を使ってコード進行の観点から高…