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「転生オリ主」の出現――「憑依」と「オリ主」の落ち合うところで/「トリップ夢主」の方へ

 

追記(2023/4/30):20000文字ほど加筆修正した増補版が以下に掲載されています。

 

kakuyomu.jp

 

 

前書き

 

 「小説家になろう」の「異世界転生」を準備したのは2008-2012年の「二次創作」*1シーンにおいて流行した「転生オリ主」(現実世界からやってきた原作には登場しないオリジナル主人公)である、という話はネット小説/Web小説を論じるいくつものテクストで見られるし、このブログ内でも何回かしている。

 

web小説における「転生」普及過程 - 小説家になろう

なろう批評2:「転生」と「転移」について/崩れ去るリアリティ/転生オリ主の遺言 - 古い土地

 

 そうすると次に問われるのは「転生オリ主はどこから来たのか」であろう。

 ここで「アイディア」としての転生オリ主と「ジャンル」としての転生オリ主を区別しておきたい。前者について起源を辿ることは難しいし、あまり意味がない。

 遡ると1999年の『新世紀エヴァンゲリオン』(TVアニメ1995-96年)二次ですでに「轢死転生オリ主」が確認されている(『EVANGELION in METAL』*2や「Holy Beast」掲載の『an irony of fate~運命のいたずら~』)。「現実世界から作品世界へ」というアイディアだけなら、『はてしない物語』(1979年)や『ドラえもん』(1969年-)のひみつ道具「絵本入りこみぐつ」(1980年)、a-ha〈Take On ME〉のMV(1984年)などにも見られる。

 アイディアとしての転生オリ主は陳腐であり、いつの時代も作品の自己移入的な消費のすぐ傍にいた。しかし安易であるからこそ欲望の表出は抑圧され(もし表出するなら物語の前半を丸々転移の準備に費やした『はてしない物語』のように「うまくやる」ことが要求され)、二次創作ジャンルとしての形成を阻んできたように見える。

 

 「転生オリ主」が一大ジャンルと化したのは2008年のSS投稿掲示板「Arcadia」(2001年-、通称「理想郷」)においてだった。ただし夢小説を考慮すると話は変わる(「トリップ夢主:夢小説の系譜」参照)。

 2008年は二次創作の受け皿が原作ごとに二次創作を収集する個人サイトから原作を問わず二次創作を集約するArcadiaへ移行した時期である。大規模な共同体と競争の激化、そして新しい世代の急増によって「転生オリ主」のジャンル化を阻んできた「一線」は越えられたのだ。

 2008年末にはArcadiaで転生オリ主は完全に流行していたと言える。例えば界隈の人々にとって伝説的な作品、『魔法少女リリカルなのは』(2004年-)二次の『紐糸日記』(2008年11月-)の名を挙げよう。

 では、それ以前はどうだったのか。Arcadiaにおいて、個人サイトにおいて、夢小説において、2ちゃんねるSS板において、転生オリ主の流行は如何に準備されていたのだろうか。

 この手の歴史語りは他の文献でも見られるが([reference]参照)、具体的な作品ベースで追うことが本稿の目標となる。シーンを織りなすのは常に無数の凡作・駄作であることは承知の上で、流れを変えた重要な作品を探りたいのだ。19000文字もある長い論考だが、よければお付き合いいただきたい。

 

 「転生オリ主」は二つの異なるジャンル「トリップ」と「オリ主」が合流して生まれたジャンルであることに注意しておこう。単語の選択や定義は時代・文化によりブレが見られるが、ここでは次のように扱う。

「トリップ」:現実世界の人間が作品世界/異世界に来訪するもの。

「オリ主」:原作に登場しないオリジナルキャラクターを二次創作の主人公とするもの。

 「トリップ」のサブジャンルとして次が存在する。

転生」:現実世界での死をきっかけに来訪するもの。狭義では死んだあと赤子からやり直すもの。

憑依」:来訪先に存在した人物の精神を乗っ取る形で来訪するもの。

転移」:そのままパッと移動するもの。

召喚」:転移のうち特にきっかけが来訪先の魔術的儀式であるもの。

 これらは必ずしも排反ではない。例えば、現実世界で死んだが(「転生」)死ぬ直前の身体でチート能力もなく異世界にいる(実質的な「転移」)とか、現実世界で死んで(「転生」)異世界の人間の精神を乗っ取る(「憑依」)とか、といった具合。

 「転生オリ主」の形成過程においては死をきっかけとしない「転移」パターン(「朝起きたら俺は」「ふと気が付くと俺は」)も多かった。「転生」に形勢が傾くのは2008年末-2009年前半に「神様転生」「転生特典」「転生トラック」「踏み台転生者」等のミームが整備されてからのことである。

 2010年以降の「小説家になろう」において「転移」と「転生」を比べると、やはり死の気配がする「転生」の方がより「なろう」らしく、考察のしがいもあるだろう。けれど前段階としてあった2008年末までの「二次創作」シーンにおいては、まず「現実世界から作品世界に飛び込む」機構がすこぶる非自明で呑み込みがたいものだったために、その手段が「転移」だろうと「転生」だろうと大差なかったようだ。そのため今回は死をきっかけとしないものも「転生」と記してしまうことがある。

 (「オタク的な表現」における)「トリップ」のうち、「転移」「召喚」は『ナルニア国物語』(1950-56年)から始まる長い歴史を持っているが、「憑依」「転生」は比較的新しい概念だ(『なろう批評2』参照)。その形成過程をまずは追ってみよう。

 

 

 

 

「憑依」の形成

 

 「憑依」のジャンル形成は『新世紀エヴァンゲリオン』二次創作の時代に遡る。

 1996-1999年の第一次『エヴァ』SSブームにおいて、「逆行呼ばれるジャンルが確立された(『Replay』等)。これは原作キャラ(特に主人公碇シンジ)が物語の結末から過去へ(精神・記憶のみ)タイムスリップすることから始まる二次創作である。未来知識による原作の悲劇の回避がメインテーマになる。

 同時期に「スパシン」と呼ばれる、ときに作者の自己満足のためだけに原作からかけ離れた設定を加えられた碇シンジの登場する二次創作が確立された(『少年兵シンジ』等)。この種の現象は二次創作で普遍的に起きるもので、「魔改造主人公」と呼ばれている。原作へのリスペクト精神から離れ、二次創作だけを見て二次創作をする志向の萌芽が見られる。

 「逆行」「スパシン」を背景に、2001-02年の第二次『エヴァ』SSブームにおいて「憑依」がジャンルとして確立する(『体験EVA』等)。現実世界の人間の精神が作品世界のキャラ(主に碇シンジ)に乗り移ってしまうというジャンルだ。原作知識による原作の悲劇の回避、「自分だったらこうするのに」の実現がテーマとなる。

 

 『エヴァ』二次の時代には全てがあった。「オリ主」を除いて。

 いかんせん『エヴァ』二次だと、「原作未読系二次創作」が出現する第二次ブームにおいてすら、オリ主はジャンル形成するほど流行らなかった。オリ主を導入する最も強くナイーヴな理由は自己移入だが、『エヴァ』二次の場合、寄る辺ないオリ主よりも「スパシン」を始めとして異常なほど文脈が積まれた碇シンジの方が欲望の受け皿として優秀だったのかもしれない。憑依するとしてもオリキャラより断然碇シンジが選ばれる――もしオリキャラに憑依していたら「転生オリ主」は完成していたのに!

 ここでは「流行っているものは微改変を加えられながらますます複製される」という、シーンの中に置かれた創作物にたびたび見られる現象が起こっている。特に「参照系」システムではよくあることだ(「補足:「参照系」システムについて」参照)。

 

 追記:『エヴァ』原作の構造もオリ主の介入を拒んでいる。つまり、シンジ君の活躍(エヴァに乗れること)には彼の特殊な出自が関わっているため、オリ主による直接的な代替が困難なのだ。

 しかしながら、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021年)が公開され二次創作が盛り上がったときには、様々な立ち位置のオリ主が登場した。「シンジ君をTS(性転換)させヒロイン化させながらオリ主をシンジ君の位置に滑り込ませる」というアクロバットをやった作品もいくつか見かけた。20年経てば当然手法は変わる。それでも全体からするとオリ主の割合が低めなのは、原作の構造ゆえか、積み重ねられた文脈のゆえか。

 

 

「オリ主」の形成

 

 「オリ主」は歴史が長い。

 「作品をつまらなくする自己投影型最強系(女)オリ主」の揶揄として「メアリー・スー」という言葉は今日よく使われる。この言葉が生まれたのは1970年代アメリカ、当時の『スタートレック』(1966年-、SFテレビドラマ)二次創作シーンを皮肉る二次創作『A Trekkie's Tale』(1973年)によってだった。つまり『スタートレック』ファンダムではクソみたいなオリ主二次が大流行していたのだ。

 日本においてもウェブ以前、コミックマーケット等で生じた「二次創作」シーンでオリ主がジャンル化したことはたびたびあったのではないか、と想像できる。

 

 ところが。ウェブ黎明期(パソコン通信からインターネットに移行する1995年頃)の日本の二次創作シーンは「SS(ショートストーリー)」の名に残っているように短編中心だった。本編から大きく逸脱することがなく、オリキャラやオリ主の入り込む余地など当然ない。全体的に原作原理主義が強く、二次創作の「二次」性が強調されていた土壌だったので、長編においてもオリキャラが出てくることはなかった。

 それが次第に緩んでくる。『エヴァ』二次の場合、殆どオリ主のような「魔改造主人公」が登場し、「憑依」が登場し、原作放映が過去のこととなって、二次創作の「創作」性の方が強調されるようになる。『エヴァ』二次でオリ主は流行らなかったが、「オリキャラ」が多数出てくる「第二特務機関」モノは流行った。

 原作原理主義が緩み、シーンに「原作未読系二次創作」が現れるほど原作が軽視されるようになると、原作の垣根を超えて二次創作の諸手法を流通させることが可能になる。「クロスオーバー」二次創作の普及もこれを支えているだろう。『エヴァ』二次で開発された手法は様々なサイト・原作・二次創作を通じて転生オリ主の時代まで、そして2023年まで受け継がれている。だから重要なのだ。

 

 『エヴァ』、『Kanon』(1999年)、『GS美神 極楽大作戦!!』(1991-99年)、『機動戦艦ナデシコ』(1996-97年)、『とらいあんぐるハート3』(2000年)といった作品では、それぞれ「スパシン」「U-1」「YOKOSHIMA」「AKITO」「KYOYA」と呼ばれる「魔改造主人公」が流行した。原作主人公が自己移入欲求を満たしていた。しかし2003-4年頃から『とらハ3』や『Fate/stay night』(2004年)で「オリ主」のジャンル化が見られる。

 「オリ主」の普及に一役買った作品として『魔法先生ネギま!』(2003-12年)を取り上げよう。『ネギま』二次では「魔改造主人公」は流行らず、むしろ原作主人公は「アンチ・ヘイト」される傾向にあった。現代的な「ハーレム」構造の導入により原作の人気が主人公の人気ではなくヒロインの人気に比例し、原作主人公の活躍をオリ主(またはクロスオーバー先の主人公)が奪うのに抵抗感がなかったこと。これこそ『ネギま』の功績だ。

 「投稿図書」という2006-08年の間『ネギま』二次を集約していたサイトにおいてジャンル傾向を調べてみると、記事数ベースでは「ネギま!ノーマル掲示板(オリNG)」が143件、「ネギま!ノーマル掲示板(オリOK)」(≒オリ主二次)が1686件だった。10倍以上の差がある。ちなみにクロスオーバー二次はオリ主二次と同等かそれ以上に多い。

 『ネギま』についてはまた別の記事で語ることにする。

 

 2006年に「憑依/トリップ」と「オリ主」がジャンルとして出揃ったとき、それらを組み合わせた「転生オリ主」もサブジャンル程度には認知されていたようである。Arcadiaの捜索掲示板(投稿掲示板としての全盛期は08-10年だが、捜索掲示板としては古くから利用されていた)においては「オリキャラ憑依」や「現実→〇〇(作品名)」などの呼び名で作品が探されていた。

 

 

コラム:ゲーム的感覚とオリ主

 

 ゲームがライトノベルに与えた影響はあまりに大きい。「ゲーム風異世界ファンタジー」、「レベルアップ」、「ダンジョン」、「死に戻り」(東浩紀ゲーム的リアリズムの誕生』参照)。死の軽さと復活は「転生」の前提でもある。

 ゼロ年代ネットゲームの時代には、「VRMMO」(『SAO』2002年Web連載開始)、「ネカマ」(TSへの影響大)、「冒険者・ギルド・ランク制度」。『異世界迷宮で奴隷ハーレムを』(2011年-)に代表されるなろうの「ゲーム小説」に関しては、直接のプレイ体験ではなくむしろゲーム実況の快楽を引き継いでいるという議論がある*3

 

 ゲームと二次創作におけるオリ主の関係、と言うともうほとんど自明だが、プレイヤーが主人公の名前を自由に決められるタイプのゲームは、オリ主の形成に一役買っていた。いくつか並べてみる。

 『ときめきメモリアル』(1994年-)の二次創作は1996-2000年の間活発に行われていた*4。ただし、主人公の名前としてよく採用されていた「主人 公(ぬしびと こう)」に表れているように、この時代の書き手・読み手はオリ主に対して妙な「照れ」と「忌避感」を抱えていた。

 『ドラゴンクエスト』(1986年-)はやはり巨大なコンテンツで、二次創作も古くから盛んだった*5*6

 『スーパーロボット大戦』シリーズ(1991年-)は公式が「ロボット」をテーマとした多重クロスオーバー作品になっている。さらに『第4次』(1995年)ではどの原作にも登場しないオリキャラが主人公になった(8人の中から選択し、名前・性格・血液型などを自由に設定できる)。つまり、「多重クロスオリ主二次」が95年の時点でやられていたのだ。「オリジナル主人公」という言葉を普及させたのもこの作品による。また、「スパロボ補正」によってしばしば「原作の悲劇からの救済」が行われており、時代や消費者層的に『エヴァ』二次の「逆行」系に影響していそうだ。

 『ロードス島伝説』(1988-1993年)のようなTRPGリプレイ、『ネットゲーム90 蓬萊学園の冒険!』(1990-91年)のような「プレイバイメール」(郵便やインターネットなど通信媒体を用いて遠隔地のプレイヤー同士が遊ぶゲームの総称)の名も挙げておこう。

 

 こういった「ゲーム」と「オリ主」の関係は、夢小説においても観察できる。「トリップ夢主:夢小説の系譜」を参照。

 

 

転生オリ主:個人サイト/2ちゃんねるSS板/ニコニコ動画

 

 個人サイトの時代の二次創作を体系的に調べることは難しい。サイトのばらけ具合からシーンの繋がりが緩やかで、PVやランキングによる競争も激しくないから、「影響力」を当時シーンに居た人々による印象論以上の方法で語ることができないのだ。「転生オリ主」普及の過程も、本当はもうちょっと定量的に調べたいのだが……。

 個人サイトの転生オリ主モノで影響が大きかったらしい作品を取り上げよう。

 Arcadiaや「にじファン」(2010-12年、Arcadiaの次に二次創作の受け皿となったサイト)において『魔法少女リリカルなのは』(2004年-)二次は異様なほど人気だった。原作からして二次創作に限らないオタク界隈で人気だったようである。そんな『なのは』二次で「転生オリ主」流行のきっかけとなったのは、『聖句』(2007年8月?-)という「TS転生オリ主」(現実世界で男だったのが作品世界で女になる)の傑作だった。これは当時すでに蔓延していた(そして転生オリ主の時代にも腐るほど見る)「最強系ニコポハーレムオリ主」に対するメタとして登場したきらいがある。次に『憑依奮闘記』(2008年3月-)が現れる。原作開始前から始まる重厚なオリジナルストーリーをメインとしていた。

 『ゼロの使い魔』(2004-17年)二次も大流行していた。2chSS板の『あの作品のキャラがルイズに召還されました』(2007年6月-)スレに代表されるようにクロスオーバーが異常に強い印象だが、それらに混ざって転生オリ主も存在したようだ(しかし「トリップ」する場合まだ「サブキャラ憑依」の方が強かった印象)。特に、すでに転生オリ主が流行した頃の作品だが、『ハルケギニア南船北竜』(2008年11月?-)は傑作だった。オリ主が赤子の状態から物語を始める点で真に「転生」であり、「なろう」の「異世界転生」シーン全体に深く影響した作品だ。

 『ゼロの使い魔』二次は「なろう」の「ナーロッパ」を用意した点でも重要である。「なろう」の傍に姉妹サイト「にじファン」*7があり、そこで流行っていた『ゼロ魔』の転生オリ主二次が輸入された形。

 

 転生オリ主ではないが、一次創作(あるいは「歴史」を原作とする二次創作)の憑依モノとして『提督たちの憂鬱』(2006年6月-、「蒼の混沌」掲載)の名を挙げておきたい。三次創作が多数現れるほどの人気があり、後続の歴史改変モノ(『腕白関白』等)にも影響している。憑依者複数でオタクサークルを形成しワチャワチャするのは時代を先取りした感がある。

 

 二次創作小説史からすると傍流だが忘れるべきでない系譜を紹介しよう。「ニコニコ動画」(2006年-)において動画媒体で投稿された、『東方Project』(1996年-)二次の「幻想入り」シリーズである。

 「幻想入り」は後にクロスオーバーが主流となるが、発端となった動画は『東方俺が幻想入り(視聴者参加型動画)』(2007年10月-)のように「転移オリ主」だった。当時から現在まで東方の二次創作を集約している大手投稿サイト「東方創想話」は堅い雰囲気であり、「転移オリ主」など到底許されなかっただろう。その点で動画媒体の意味はあった。

 Arcadiaの「転生オリ主」ブームはその時代性・ジュブナイルにおいて、ニコニコ動画の文化と近接している。例えば『ネギま!! 元一般人の生き方。』(2009年1-3月)の後書きに引用される感想は次の通り。

『作者がメイドインヘブン』 『クーガーを超えた者』 「到達者」 『投稿数より二つ名のほうが多い作者』 『読者がオチオチ寝られない』 『ブレーキなぞ既に捨てた』 『DIO=作者』 「ウィルス進化論体現者」 『作者の病気はアギにも治せない。』 『作者は電波受信中』 「ジェバンニが一晩でやってくれた所じゃない」 「ジェバンニ以上の仕事量」 「戦闘機人」 「クーガーの持論を体現した者」 「週刊でもなく日刊でもなく時刊」 『ジェバンニ涙目』 『病院逃げて』 『リアルジェバンニ』 『三番目の刹那(アンノウンレプリカ)』 『自重を知らない神』 『最速の後継者』 (以下略)

http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=akamatu&all=6186&n=23#kij

 『俺幻想入り』の投稿開始時である2007年10月は中々「ちょうどよい」時期で、Arcadiaに対する影響は一定以上あったと見込まれる。また、「視聴者が展開を決める」という制作者と受容者の交流の重視も、人口の多かったArcadiaの「二次創作」シーンと共通する。

 

 興味深いことに、『ゼロ魔』二次がクロスオーバーから転生オリ主に移行したのに対し、「幻想入り」シリーズは(転移)オリ主からクロスオーバーに移行している。ここから「クロスオーバー」(作品間の越境)と「トリップ」(虚構と現実の越境)が08-12年の「二次創作」シーンにおいて大差ない作業になっていた、と言えるかもしれない。

 「憑依」が形成される前に「逆行」(過去と未来の越境)があったことも付け加えておこう。

 

 

転生オリ主:Arcadiaで流行るまで

 

 Arcadiaは他の個人サイトに比べればずっとUIが良く、検索性も良かった。

 Arcadia投稿掲示板で伸びていた転生オリ主二次創作を調べてみよう。検索ワードは「現実→」「転生」「憑依」等。現在のPV10万以上を最低基準とし、PVが現在100万を超えているものには「★」を付けた*8

 

・『雨迷子(現実→HUNTER×HUNTER)』(2006年10月-2007年4月、No.2117、PV19万、感想170)

・『Greed Island Cross(現実→HUNTER×HUNTER)【完結】』(2007年9月-2008年8月、No.2186、PV52万、感想50)

・『お医者さまの転生日記(現実→HUNTER×HUNTER)』(2007年10月-、No.2207、PV20万、感想30)

 『HUNTER×HUNTER』(1998年-)から二次創作を三つ。

 『雨迷子』は転生者が複数(二人)登場しており中々先進的だ。これは『ハンタ』二次(特にバトルメインの作品)によく見られる傾向である。オリジナル念能力を持った転生者同士のバトルを書きたくなる気持ちはよくわかる。

 他原作と比べると『ハンタ』の二次創作は女主人公/TS主人公率がかなり高い。その中にはバトルよりキャラ萌えをメインとした夢小説の流れを汲むものが一部ある。夢小説については後述。

 

★『銀凡伝』(2006年10月-、No.2215、PV150万、感想1300)

  ウェブ以前から二次創作の蓄積がある『銀河英雄伝説』(1982-89年)で転生オリ主。この時期の作品としてはかなりPVを伸ばしている

 

 次はArcadiaが全盛を迎えつつある2008年頃の転生オリ主二次。

★『NARUTO うちはルイ暴走忍法帖』(2008年5月-、No.3089、PV120万、感想700)

・『麻帆良の戦鬼 (ネギま 現実→憑依)』(2008年6月-、No.3299、PV32万、感想250)

★『コレはフィクションです。実際の(ry  (リリカルなのは+オリ他、再構成、ネタ)』(2008年7月-、No.3302、PV130万、感想650)

★『リリカル in wonder 無印五話 挿絵追加』(2008年8月-09年3月、No.3690、PV120万、感想1700)

・『デ・ストレンジャー 異邦人の魔法先生 (オリ主 現実→)』(2008年8月-、No.3735、PV40万、感想120)

・『ゼロの使い魔と三ツ星の狩人(オリジナル)』(2008年9月-、No.4075、PV31万、感想190)

 『ネギま よくある現実→転生系 テストってみた』(2008年8月)というタイトルの作品が存在するように、2008年8月頃には「転生」が「よくある」状況だった。

 

 ところで、先行研究に次のような一節がある。

そして2008年前半期には、「ネギま」「なのは」「ゼロ魔」という3原作を主要な舞台として、「転生オリ主」モノが爆発的な増加を見せていく。

https://ncode.syosetu.com/n4531hu/

 これはArcadiaの投稿掲示板ではなく捜索掲示板を調べた結果として述べられている(Arcadia外まで含めた「二次創作」シーン全体の調査と思ってよい)。今回Arcadia掲載の作品を調べた限り、2008年前半の『ゼロ魔』の転生オリ主二次は全体の規模に反してやや小粒のような印象がある。うまく調べきれてないか、Arcadia外で流行があったか。

 

 転生オリ主ではないが、憑依モノとして影響力が大きかった作品を並べておきたい。

★『これはひどいオルタネイティヴ(ぶち壊し注意)』(2008年8月-、No.3960、PV350万、感想2300)

★『然もないと』(2008年8月-、No.3907、PV123万、感想1100)*9

★『腕白関白』(2008年10月-11月、No.4384、PV200万、感想1500)

 

 冒頭でも名を挙げた『紐糸日記』のデータは次の通り。

★『紐糸日記(現実→リリなの) A’s編・完』(2008年11月-2009年7月、No.4820、PV250万、感想2600)

 当時SS投稿サイトの王だったArcadiaの王だった『なのは』二次の王なので、要するに王である。「オリキャラ憑依」などと呼ばれていたものを「転生オリ主」(作中では『コードギアス』主人公「ルルーシュ」のもじりで「オリーシュ」という言葉をよく使っている)で固定化したのも『紐糸日記』の功績らしい。これを以って「転生オリ主」の完成としよう。

 

 以降、『絶対の運命(オリジナル転生 ドラゴン→人間)』(2008年12月-)のように一次創作にも「転生」が援用されるようになる。2009年3月頃には『【短編】転生トラック (ネタ注意)』という作品が生まれるほど「転生」メタが回っていたようだ。

 

 

 Arcadiaにおける転生オリ主の流行(2008末)を結末とした歴史語りはここでいったん終了となる。次節では1970年代アメリカまで遡って、別の歴史を編むことになるだろう。

 

 

 

トリップ夢主:夢小説の系譜

 

 さて、これまで「男性向け」二次創作の系譜ばかりを扱ってきたが、同等の重みを持つ「女性向け」二次創作の系譜を見逃すわけにはいかない。ケータイ小説やおい/腐/BL(ボーイズラブ)、夢小説。特に夢小説は「男性向け」における転生オリ主の形成と微妙な接点がある、と筆者は睨んでいる。「女性向け」と「男性向け」の二次創作史(の一部)を並べることで得るものは大いにあるだろう。

 

 注意書き:「男性向け」「女性向け」と分類することにジェンダー論的視点から若干の抵抗感を覚えるが、今回行う性的表象の分析に限れば鍵括弧付きの二分法が通用するようだ。「オタク」と「虚構」と「性愛」の関係については斎藤環あたりを参照。

 本節では具体的な二次創作作品を一切紹介しない。これは後述する夢小説の「閉鎖性」、作者たちの意思に従った結果である。いや、正直に言うと「そもそも作品を探せない」「何が重要な作品か分からない」という問題の方が大きかった。当時の個人サイトはInternet Archiveにすら残ってないことが多く、個人サイトをまとめていたサーチエンジンアーカイブ上では動かない。

 夢小説を本格的に語ろうとすれば本人たちの証言によるしかないのが現状である。そして2010年代中頃から散発的な語りや研究が見られるが([reference]参照)、未だ体系的な論には程遠い。

 以下の記述は「抑圧してきた側」が「されてきた側」の声を勝手に代弁するようなきまりわるいものになっていることを予めお断りしておく。

 

 「「オリ主」の形成」冒頭で「メアリー・スー」に触れていた。オリ主が『スタートレック』二次創作史において初期からジャンル化したことの裏には、ジェンダー的問題が潜んでいる。界隈の男女比が1:9という「女性向け」二次の文化だったのである。ついでに言うと年齢層は18歳周辺と35歳周辺で二分されていた(『A conversation with Paula Smith』参照)。

 唯一の女性レギュラーメンバーである「ウフーラ」は自己移入先として弱かっただろう。「紅一点」あるあるだが、ここにはウフーラが黒人女性だという人種的問題も、おそらく、絶対に潜んでいる*10

 このような状況における「女性向け」二次創作には、一般に二つの傾向が見られる。「私」を抹消するBLか、「私」を前景化するオリ主か。『スタートレック』二次では両方流行ったようだ。オリ主は「メアリー・スー」で揶揄された通りであり、BLは1970年代末から「Slash Fiction」という呼び名で普及した*11

 

 「夢小説」(初期には「ドリーム小説」「ドリー夢小説」と呼ばれている)とは一体何だろうか。とりあえず「読み手が自己投影しやすい主人公と、漫画やアニメのキャラクターとの(主に恋愛)関係を描いた二次創作」と定義しておく。

 狭義では主人公(「夢主」「ドリ主」と呼ばれる)は女性で、関係は恋愛関係で、主人公の名前を読者が自由に設定して読むことの出来る「名前変換」機能がついている。しかし広義では、主人公は「女性」に限らないし(男主人公で友情やBLを描くものや男装女性主人公がジャンル化しており、動物や無機物が主人公とされることもある)、恋愛を描くと限らずなんなら原作登場人物を目視すらしないジャンルがあり(世界観夢)、「名前変換」機能も必須ではない(ここは議論が紛糾するところである。夢小説を集約するサイトとして現在最大手の「pixiv」(2007年-)が長らく「名前変換」機能を持っていなかったため)。

 1998年頃(諸説あり)誕生した夢小説は、2001年4月に名前変換CGI「DreamMaker」が配布されるやいなや個人サイトの間で爆発的に広まった。2003年7月には夢小説が手軽に作れるケータイサイト作成サイト「フォレストページ」がサービスを開始し、以降スマホが普及するまで夢小説の主戦場はケータイサイトに映る。

 

 夢小説における「ゲームの主人公のように名前が不定の主人公」は即座にオリ主を成立させる*12

 「トリップ」のジャンル形成も非常に早かった。「現代に生きる名前不定のゲーム主人公が異世界転移」する『遙かなる時空の中で』(2000年-、乙女ゲーム)が当時夢小説の界隈で人気を博していたためだろう。同条件の『サモンナイト』(2000年-、SRPG)もじわじわ夢小説を増やしていた。これらの夢二次創作は即座に「転移オリ主」(夢小説の文脈では「トリップ夢主」と呼ばれる)を成立させる。

 2003-04年頃は激動の時代だ。他の原作に対しても「転移/転生オリ主」が適用され、完全にジャンルとして確立したようである。他に起きたことを列挙すると:

・「TD-SEARCH」という異世界トリップ夢小説専用の検索サイトが生まれた。

・「転生トラック」が定番化した*13。夢小説における「神様転生」の定着がこの時期なのか、それとも08年に「男性向け」二次創作シーンから輸入してきたのかは、調査不足により分かっていない。

・同じ夢主がいくつもの作品世界に渡る治安の悪そうな多重トリップ系が存在した。

・「憑依」(夢小説の文脈だと「成り代わり」と呼ばれることの方が多く意味もややズレる)が成立した。

・夢主の主流が「モブ」(特徴を薄くする)型から「オリキャラ」(特徴を様々な方向でつける。「おもしれー女」「ほわほわ愛され女」等)型へ移行し始めた。

・媒体がPC個人サイトからケータイサイトへ移行しつつあった。

 

 個人サイトの時代の「女性向け」二次創作が閉鎖的だったことはよく知られている。隠されたサイト入口、検索除け(例えば「ホイッスル二次」と書くのではなく「ホ/イ/ッ/ス/ル二次」と書く)、検索除けがされていない掲示板での公開禁止。インターネットの匿名性を帯びてもなお「女性向け」ジャンルは「男性」から叩かれていたし(2chに晒されて粘着等)、「女性向け」の中でも「棲み分け」(腐と夢、カップリングその他)の名のもとに妙に分断されているし(越境も対立も起こる)、同じ夢同じカプでも「同担拒否」を理由に気に入らないサイトは荒らされたりした。このようなわけで多くのサイトがネットの海に消えていったのである。

 しかしながら、閉鎖は完璧ではなかった。「「男性」が自分の好きな「男性向け」作品の二次創作を探すうちに夢小説に辿り着く」という現象はしばしば起こったらしい。例えば2004年に「『ハンタ』の長編SSが探す限り夢小説ばっかりだけどゴン主人公の二次創作は無いのか」という捜索スレッドがある。

 ゼロ年代前半に夢二次創作が人気だった作品を列挙すると、『ホイッスル』、『テニスの王子様』、『NARUTO』、『HUNTER×HUNTER』、『鋼の錬金術師』、『ハリー・ポッター』、『ガンダムSEED』、ゲームの『テイルズ』シリーズ……(以上は2004年までのArcadia捜索掲示板で観察できたもの)。「男性向け」としても需要がありそうで、しかし「男性向け」ではあまり供給がないラインナップだ。

 夢小説の中には、男主人公だったりフィメール・ファンタジー性が低かったり物語として面白かったりして、「男性」でも読めるものがしばしばあった。事情はよくわからないが『魔法少女リリカルなのは』や『らき☆すた』の夢小説も存在したらしい。こういったところから微妙な接点が生じたのではないか、と想像する。そしてまた、『サモンナイト』板をカテゴリとして持っているArcadiaの捜索掲示板では夢小説がときに露出し、文化交流(少なくともすれ違い)の場として機能したのではないかと。

 

 04年のトリップ夢主と08年の転生オリ主のタイムラグは何なのか、考えてみよう。

 まず、大して交流が無かった可能性。夢小説からの影響はあったとして『ナルト』『ハンタ』二次に局限されるのではないか、と有識者は述べている。

 次に、アイディアを輸入したくてもできなかったという可能性。04年頃の「男性向け」ジャンルでオリ主が定着していたのは『とらハ3』『Fate/stay night』『ネギま』あたりだった。定着していたとして『ネギま』以外は傍流だったし、偏見に近いが『ネギま』二次の書き手・読み手(メイン層は若い世代)が夢小説に遭遇して影響される確率は低そうだ。06年頃「男性向け」二次創作でオリ主が一般化したとき、夢小説の主戦場はケータイサイトに移っていた。もちろん「男性」がケータイサイトに触れることはあったし、PC個人サイトの夢小説もまだ残ってはいたが。

 また、「トリップオリ主」の背景には強力な「異世界転移」コンテンツが必要で、ゼロ年代前半の「男性向け」界隈にはそれが足りていなかったのかもしれない*14

 強力な「異世界転移」コンテンツとはつまり、「女性向け」の場合は『遙かなる時空の中で』であり、「男性向け」の場合は『ゼロの使い魔』である。次のようにパラレルに扱うことは許されるだろうか?

2002年:『遙かなる時空の中で』夢二次の増加(というよりは夢小説全体の急増)

→2004年:トリップ夢主の流行

2006年:『ゼロの使い魔』二次の増加

→2008年:転生オリ主の流行

 

 気になるのは、『ゼロの使い魔』で「転移」が与えられたときまず流行したのがクロスオーバーだったこと*15、「トリップ」するとしてもサブキャラ憑依(「ギーシュ憑依」等)が多かったことである。必要性を感じなかった? いや、後に流行する「貴族転生」等の転移/転生オリ主に対してまだ「照れ」や「忌避感」があるようにも見える*16。この欲望の抑圧を突破したのは、Arcadiaによる集約化と文脈を知らない若年層の出現によってだった。

 夢小説の場合、あらかじめ欲望は抑圧されていた。夢小説というものの構造上「はにかみ」を(特に自分の名前を入力するタイプの人の恥ずかしさを想定してほしい)、閉鎖性に見られるように「後ろ暗さ」を、「彼女」らは常に抱えていた。だから夢小説を書き始めた時点で「一線」は越えており、現実世界から作品世界に来訪することなどわけなかったのかもしれない。

 そもそも夢主=「書き手でも読み手でも他の誰かでもあり得る主人公」に対して「名付ける」という行為は、現実から作品に影響を及ぼすという点で「トリップ」と親和性が高いのではないか。ここからはなにか、現代において「作品」を「読むこと」「書くこと」に関する洞察を取り出せそうだ(例えば「〈私〉を読むこと、〈私〉を書くこと」『ゆめこうさつぶ!~庭球日誌~』を参照)。

 あとは01-04年に夢小説人口が急増したことによる勢いも考慮すべきだろう。 

 

 

 本節はこれまで「女性向け」二次創作に触れてこなかった筆者が一週間程度調べて書いた内容のため、事実誤認が含まれたり見立てが説得的でない可能性は十分ある。問題があればぜひご指摘願いたい。

 

 

 

補足:「参照系」システムについて

 

 「参照系」システムはゼロ年代批評を援用しつつ『エヴァ』二次創作シーンについて考察した次の論文で提唱されている。

二次創作(を/から)視る

http://nss.atlas.vc/other/thesis.htm

 

 東浩紀は『動物化するポストモダン』(2001年、講談社)において、90年代後半に「オタク的な表現」の軸足が物語消費からデータベース消費(特にキャラ消費)に移り、「キャラ」が「本質的に二次創作として(データベースを参照して)生まれ、これから二次創作される(データベースに還元登録される)」ような状況であることを指摘した。

 しかし2008-2012年にSS投稿サイト「Arcadia」「にじファン」で繰り広げられた二次創作シーンは、広義ではデータベース消費(作品の深層にある汎作品的に共有された何かを読む)と言えるものの、東の想定する「個々の作品(シミュラークル)の参照元となり作品を支配する静的なデータベース」とは様相を異にした。すなわち、実際の二次創作シーンはメタゲームの加速により新陳代謝が激しく、何個も生まれる「決定的な作品」やそれらを取り巻く無数の良作・凡作・駄作によりデータベースが著しく「生成変化」する環境にあったのだ。作品とデータベースの関係は一方的でなく、さらに「原作未読系二次創作」に代表されるように、二次創作はデータベースを参照するだけでなく周囲の二次創作を参照する(=データベースへの参照を参照する)。もちろんこの「参照の束/参照系」はいくらでも高次になる。また「能力だけクロス」に代表されるように、異なる原作、あるいは異なる原作の二次創作すら重要な参照元となっていた。

 「参照系」が観察できるほどメタゲームが加速している例として他に、2001-04年頃の『エヴァ』二次、『機動戦艦ナデシコ』二次、『Kanon』二次、2003-05年頃の夢小説、2010年以降の「小説家になろう」などが挙げられる。

 「参照系」が本当に「オタク的な表現」と結びついているのか(ともすれば「オタク的な表現」が「参照系」によって特徴づけられるか)は今後検討する必要があるだろう。

 

 追記:メタゲームとコミュニティの関係について、次の論文では「プロジェクション科学」と呼ばれる認知科学の一分野から分析が行われている。

異投射・虚投射の発生と共有: 腐女子の妄想と二次創作を通じて

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/26/1/26_40/_pdf/-char/ja

 「解釈の多様性」が謳われているが、「原作未読系二次創作」など治安の悪い方向(BL二次創作にも当然ある)は考慮に入れていないのだろうか。

 

 

 

[reference]

 

転生オリ主周辺/ウェブ上の「男性向け」二次創作史

 

web小説における「転生」普及過程

https://ncode.syosetu.com/n4531hu/

主資料1。

 

【不特定】「転生オリ主」を流行らせた作品(~2008年)

https://syosetu.org/?mode=seek_view&thread_id=38921

ハーメルンの捜索スレ。主資料2。特に夢小説に関してはここの証言を一次資料とすることが多かった。

 

エヴァSS」から「小説家になろう」までのWeb小説年表

https://kazenotori.hatenablog.com/entry/2018/11/03/203057

レファレンス集としても有用1。

 

転生トラックの元ネタを探しに行った

https://katoyuu.hatenablog.jp/entry/reincarnationtruck

レファレンス集としても有用2。

 

これがなろう勝利の理由! 〜昨今のネット小説新参にむけて古参が、なろうが勝者になった理由と歴史を書きなぐる話〜

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886692033

事実誤認がかなり多い。口伝資料としては参考になる。

 

ハーメルン関連資料

https://ncode.syosetu.com/n7135hs/1/

 

二次創作(を/から)視る

http://nss.atlas.vc/other/thesis.htm

ゼロ年代批評から見る『エヴァ』SS。ウェブ上の二次創作小説を論じるにあたっては必須とさえ言えるが、7万文字もあるので気軽に勧められない。

 

なろう批評2:「転生」と「転移」について/崩れ去るリアリティ/転生オリ主の遺言

https://wagaizumo.hatenablog.com/entry/2023/01/29/223338

 

 

夢小説/BL

 

夢を夢見る:文化としての夢創作と記録

https://note.com/7mi___n/n/nc5bab4d5cdee

夢小説に関するレファレンス集1。論文中心。

 

夢創作の話が聞きたい

https://note.com/7mi___n/m/m049be4a5f168

夢小説に関するレファレンス集2。エッセイ中心。

 

ゆめこうさつぶ!~庭球日誌~

http://yinfo.web.fc2.com/ykb.pdf

「夢主モブ」派閥による対談と論考。

 

女性向けオタク文化について考える~夢小説編~

https://blog.yume-saku.site/otomeculture-dream/

歴史の概観。

 

「夢女子」のような「夢男子」はいるのか。「夢男子」を名乗らなかったのは何故か。そもそも「夢女子」って何ぞ。

https://note.com/wagashidana/n/n5006d823a1aa?magazine_key=m049be4a5f168

本稿とは逆に、夢小説から見る「オリ主」。

 

卒論「夢女子」全文

https://note.com/sazana_mi/n/n80dc3a1e26e9?magazine_key=m049be4a5f168#c6cd8c61-de1c-4592-b065-1ede5a23dc2f

33000文字の卒業論文

 

夢ラジオ(シーズン1)#1~18

https://note.com/yumeradio/n/n797d8754194f?magazine_key=m049be4a5f168#a91d27bf-4660-479f-b2ac-51a275896508

 

異投射・虚投射の発生と共有: 腐女子の妄想と二次創作を通じて

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/26/1/26_40/_pdf/-char/ja

 

 

より広い創作史

 

異世界召喚・転移・転生ファンタジーライトノベル年表

https://www.bookoffonline.co.jp/files/lnovel/pickup/pickup_isekai-history.html

 

カスガ氏によるメアリー・スーの元ネタA Trekkie's Taleの日本語訳

https://togetter.com/li/676503

 

A conversation with Paula Smith

https://journal.transformativeworks.org/index.php/twc/article/view/243/205

メアリー・スー」の生みの親ポーラ・スミスに対するインタビュー。おすすめ。

 

二次創作する読者の系譜

http://repository.seikei.ac.jp/dspace/bitstream/10928/627/1/jinbun-23_63-90.pdf

1980年代までの日本二次創作史。

 

二次創作文化の集団論的検討

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/262666/1/kjs_028_127.pdf

 

二次創作と同人誌即売会をめぐる語り : 東方project を軸としたそれぞれの体験

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/71626/NG_37_123.pdf

 

二次創作に関する資料を探している。二次創作の中でも同人誌を含む二次小説についての資料を探している。

https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000326622

膨大なレファレンス集

 

韓国の「異世界転生もの」「悪役令嬢もの」の解説記事を翻訳して読んでみる

https://kazenotori.hatenablog.com/entry/2021/10/24/124231

韓国では2000年頃から「転生」ものの流行があったらしく、比較対象として興味深い。

 

中国の「異世界転生もの」の解説記事を翻訳して読んでみる

https://kazenotori.hatenablog.com/entry/2022/02/08/201810

 

アジアを羽ばたいてしまっている異世界転生|井上明人 | PLANETS/第二次惑星開発委員会

 

中国のネット小説の物語論的構造及びそれを生み出したネットコミュニティのあり方 : 穿越小説を例に

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/58601/1/Huiming_Qiu.pdf

110ページある博士論文

 

 

*1:以下しばらくの間(10000文字ぐらい)、「二次創作」で「男性向け二次創作小説」を指す。「女性向け二次創作小説」については「トリップ夢主:夢小説の系譜」の節で取り扱う。

*2:https://web.archive.org/web/20040623064552/http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/8649/syosai.html 

*3:なろう批評3:ゲーム脳への序/VRMMOの衰退/VRゲームの新潮流 - 古い土地 

*4:「ガテラー図書館」https://www8.big.or.jp/~gaterar/ss/index.html 

*5:DQ小説同盟」のアーカイブhttps://web.archive.org/web/20050804002855/http://dqnovel.yoake.org/ 

*6:ゼロ年代に『ドラクエ』がおよぼした影響として次の記事は参考になる。

2ch発の魔王勇者系SSの隆盛と魔王勇者系ライトノベルの増加は関連しているのか? - WINDBIRD::ライトノベルブログ  

*7:正確には「小説家になろう」に投稿された二次創作を閲覧するサイトこそが「にじファン」だった。ちなみに一次創作を閲覧するのが「小説を読もう!」であり、さらに兄妹サイトとして「ノクターンノベルズ」や「ムーンライトノベルズ」が存在する。

*8:「No.2117」等の作品通し番号は投稿日時を推測する材料として付記した。しかし旧URLから今のURLに変わるとき(2007年末)に番号を付け直しているので、それ以前の作品に対しては無力であることをお断りしておく。

*9:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(2011-12年にArcadiaで連載、削除後2013年出版)の作者による作品。

*10:メアリー・スーはしばしばエキゾチックな出自を持つ。しかし、アメリカのメアリー・スーにおいて「黒人の血」が借用されることは殆どなかっただろう。

*11:一応述べておくと、ウフーラや準レギュラーやゲストの女性キャラをカップリングの片方に据えた異性愛カプ廚消費とか、原作を補完したり批評したりする二次創作も当然あっただろう。

*12:ここも本当は「諸流派あり」という感じらしいが、後の議論のため「オリ主」と言い切ってしまうことにする。

*13:同時期の『Kanon』二次でも「アナザーワールド」系で「転生トラック」は流行っていたとか。

*14:不足していたからこそ『Kanon』二次の「アナザーワールド」系は受けたのだろうか。

*15:「女性向け」二次創作でクロスオーバーが流行ることも多い。『ホイッスル』や『テニプリ』は『バトル・ロワイアル』パロディが流行ったらしい。「治安の悪そうな多重トリップ夢主」の存在も本文で述べた。ただ、『遙かなる時空の中で』の場合はクロスオーバー二次よりずっと夢小説の方が多かったのではないか。

*16:「参照系」システムによくある「流行っていないから作品が増えず流行らない」という選択原理が働いた可能性も考慮すべき。また一方で、なにがしかのジェンダーアイデンティティと関わっている可能性もある。2001-03年頃、オリ主と比較して選択された「魔改造主人公」は、その前提として物語の主人公と二次創作の書き手・読み手の「男性」性を要求する。