古い土地

暗い穴

2023年に読む『魔法先生ネギま!』二次創作(後編)

 

 引き続き『ネギま』の二次創作(からWeb二次創作シーン)について考えよう。

 

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wagaizumo.hatenablog.com

 

 

 

コラムC:『ネギま』二次固有の事情

 

 前編において「二次創作」シーン全体の話があまりに多くなったので、ここで『ネギま』二次の特徴も見ておきたい。

 

1.

 設定の不備を補う二次設定が広く流通している。例えば「認識阻害結界」。「学園都市内の無茶苦茶なこと(高さ270mある世界樹の存在とか)が学園外に知られないのは、おかしなことをおかしいと思わせない認識阻害の結界が張ってあるから」という設定だ。

 「そこはギャグで流せよ」と思うかもしれないが、ストーリーや人気キャラ「長谷川千雨」のシリアスな面に関わるため、補完の必要があった。

 

2.

 ヒロインの数がバカ多いのでハーレムの選択に多様性が見られる……ようなそうでもないような。クラスに31人居て半分は出番がない印象(漫画媒体と違ってセリフ無しのモブ登場が困難だ)。それでも15人はヒロイン候補なのだから十分多いか。

 

3.

 「エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」というキャラクターに人気が集中している。彼女は「作中最強格の一人で、現在はとある事情で弱体化しており、原作主人公の師匠ポジで、ドSっぽく、ツンデレで、愛に飢えているためチョロくもあり、ツッコミキャラとして優秀で、600年生きた吸血鬼だから過去篇でも絡ませやすい、金髪ロリババア」という属性盛りすぎかつ物語的に美味しすぎる配置の萌えキャラなのだ。「とりあえずエヴァの呪いを解いて助力を仰ぐ」のが『ネギま』二次のテンプレと化している。

 

4.

 「長谷川千雨」というキャラクターも人気がある。『ネギま』後半の魔法世界編ではメインヒロインのような役割を果たしたキャラで、原作者赤松健のお気に入りでもあった。出てこない作品では一切出てこないが、出てくると大抵美味しい役割が与えられる。彼女は原作において「ドタバタしたギャグテイストの世界に対し独り冷めてツッコミを入れ続ける」という立ち位置を確保しており、予め転生オリ主と似た視点を期待できた。更に一匹狼気質なため二次創作で動かしやすい。このような条件と愛ゆえに、魔改造されることが多かった。以下の「千雨魔改造SSリスト」は圧巻の出来。

http://keijyuen.blog.fc2.com/blog-entry-2141.html

 「魔改造千雨」が「HACHIMAN」と同様に、オリ主以後に必要とされた「魔改造キャラ/主人公」であることには注意が必要だろう。とある二次創作を読んでいて気づいたが、彼女にはジェイン・オースティンの小説の主人公めいた魅力がある。「おもしれー女」だ。

 

5.

 『ネギま』の偉大なところは「原作主人公アンチの流行(≒オリ主の普及)」だと「コラムB」で述べた。しかし主人公ネギはなぜアンチ・ヘイトされるのか?

 ラッキースケベ描写、例えば「ネギの魔力制御が甘いせいでくしゃみと同時に武装解除の魔法が暴発してしまい公衆の面前で女の子を下着姿まで剥く」などは、ギャグ混じりといえど度を越えた上に何度も繰り返されており、読者のラインを超えていたようだ*1。あとは魔法の秘匿が甘すぎる点も挙げられる。

 原作主人公アンチといっても、激烈なものから「オリ主がネギの失敗をフォローしてはネギやヒロインたちから賞賛を集める」といったライトなものまで幅は広い。話はズレるが、後者の「なろう」臭は面白い。『ネギま』原作の現代的ハーレム(あまり理由がなくヒロインみんな主人公が好き)も、『ネギま』二次の全方位賞賛も、「なろう」に受け継がれているかもしれない。

 アンチ・ヘイトといえば「魔法使いアンチ」も多い印象。「魔法の隠匿のために一般人に対して記憶消去魔法をすぐ使うのはどうなんだ」という話がよく書かれる。

 

6.

 「なろう」でテンプレと化した「魔法を無詠唱で放つなんてすごい」は『ネギま』二次から輸入したものらしい。

 

 

 

2010-2012年:にじファンの時代

 

 2010年に開設した「なろう」の姉妹サイト「にじファン*2Arcadiaよりさらに使い勝手が良く、ポイント評価があり、ランキングがあった。「二次創作に競争原理を導入するって、何?」と素面では思ってしまうが、それほど二次創作が集約され、集まったのは似たような質の悪い作品ばっかりで、序列化が求められていたのだ。「二次」性がないならせめて「創作」性を、というわけである。ランキングの導入(総合ランキングは原作を問わない)によりメタゲームはますます加速する。

 「にじファン」は著作権の問題をクリアできず2012年に閉鎖した。いくつかの作品は別サイトに移転し、いくつかはそのまま失われていった。

 

 次の辛辣なレビュー集から面白い部分を抜き出してみよう(太字は引用者による)。レビューされている作品は当時の『ネギま』二次でポイントを集めていたものが殆どである。

 

魔法先生ネギま! - にじファン作品レビューまとめWiki

https://w.atwiki.jp/nijifan/pages/19.html

 

>魔女と槍兵とチートがネギま!で無双

神転チートオリ主がネギま世界で型月仕様のメディアとディルムッドを召喚してハーレム作りながらアンチする話。

エヴァに対する扱いがひどい点とアンチ手段としてマスコミ攻撃を使う点が物珍しい部分か。

事実上の最高権力者がメディアと化しているためオリ主の存在感が薄い。とにかくネギアンチしたい人向けか。

 

>樹木の王

終盤の怒涛の展開からの完結の流れはネギまのアンチもの好きにとって一読の価値あり。

 

魔法先生ネギま!?最果てを紡ぐモノ?

特にネギへのアンチはすごい。わざわざ後でこき下ろす要素を作中で作って正当化するくらいにはやばい。

ここまで地雷要素が並んでいるが評価が高いのは、この地雷群の発祥に近かったりするんだろうか

 

魔法先生ネギま!カレカノ・ライフ〜

ネギま二次。神との漫才あり。絶対防御能力と最強の従者を貰って転生する男主。魔法使いアンチ。

神にヒロインを貰う展開に唖然。しかもそのヒロインは主人以外を見下し虫扱いする言動が胸糞悪い。

中盤で実の兄に恋愛感情を抱く前世の妹も転生し合流してきたあたりでギブ

この作者の別作品も空気系主人公と主人公以外を見下す最強ヒロインの構成だったりするので作者の性癖なのだろう。

 

FPSプロゲーマーが魔法世界で撃つ

ネギま二次。神との漫才あり。FPS好きが高じて実際に人間を撃ってみたいと考えるようになったアレな人間が狙撃関連のチート能力を貰ってネギま大戦期にトリップ。欲望の赴くままに狙撃していく話。当然アンチもの

無自覚な下種のテンプレチーレムオリ主と違って自覚ある外道なのでそういう話と割り切って読めるのならば楽しめるのではないだろうか。自分は無理

 

>麻帆良で生きた人

とにかく物語の脱線→クロスオーバー増加の流れがひどい

主人公の式神の一人が雛見沢へ行って惨劇を回避させた上で沙都子を嫁にしてきたり、主人公がヴァンパイア十字界世界に行って千年ほど過ごして帰ってきたり、どこかで見たような技術班がどこかで見たようなキチガイ兵器を開発する話を何度も見せられたりetc...

それらが番外編ではなく本編として関わってくる。元ネタが分からなくて置いていかれることがしばしば。

そういう脱線部分がなければ復讐モノとして楽しめたかもしれない。

 

 荒れた土地ではなく肥沃な土地であるがゆえに苛烈な生存競争が行われ、続々と奇形児が生まれた。どうもArcadiaのゴミとにじファンのゴミは毛色が違うらしい。

 まず、感想欄の雰囲気。Arcadiaはドギつい言葉が平然と出てくることがあるが、にじファン/なろうは「嫌なら見るな」の精神が強い。これは作者を保護するとともに自浄作用もなくしている。

 次に年齢層。そもそもArcadiaにおける「転生オリ主」の流行は、二次創作の書き手・読み手として若年齢層が急増したことも関係している(前編の『ネギま!! 元一般人の生き方。』を参照)。にじファンになると更に新しい世代が参入し、「Nintendo DSで書いている」作家まで現れたそうだ*3。このような作家たちがにじファン崩壊後も創作活動を続けていたかは不明だ。

 Internet Archiveから当時の『ネギま』二次ランキングを眺めていると、「9割のゴミ」が観察できる(先のレビューも参照)。にじファン後継サイトである「ハーメルン」(次節参照)は、ランキングシステムを健全化するところから始まった。

https://web.archive.org/web/20120128160919/http://nizisosaku.com/search/search/search.php?ow=%E9%AD%94%E6%B3%95%E5%85%88%E7%94%9F%E3%83%8D%E3%82%AE%E3%81%BE%21&word=&type=&order=hyoka

 

 

 今でもまともに読める「にじファン」時代の遺物として二つだけ取り上げたい。

 

【完結】テンプレ通りに進めたい(転生・原作知識有り)

http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=32356&n=0&count=1#kiji

 憑依もの。チート能力の「ガンダムUC」が殆ど活用されない。

 「ハーメルン」に掲載されている『AS オートマティック・ストラトス』(2013-14年)と同じ作者であり、後で知って納得した。文体やねちっこく前準備して隙のないオリ主の超越的自我が共通している。

 スケベなオコジョ妖精「カモ」が去勢されているのが印象的。原作では下着泥棒などヘイトを買う三枚目的行動をたびたび起こしていたが、去勢を実際にやった二次創作、正確には「去勢済みのキャラ」として登場させた二次創作はこの作品の他に知らない。いや、『ネギえもん』は原作主人公去勢済みだし、『改造人間にされたくない』はとあるキャラが謂れなく去勢の危機に陥っていた。

 

 

チェンジ、メタリック千雨!

https://syosetu.org/novel/2314/

 千雨魔改造もの。「正確にイメージしたものを具現化する」という異能が与えられる。

 地の文を中心とする叙述のロジックが完全に「小説」なのが面白い。そこに如何にラノベ=キャラ小説を混ぜていくかという課題に取り組んでいる。絶対に千雨魔改造でやる必要がない。

 

 

 今では読むことができないが、『厨二病ランナー』という作品が気になる。原作ヒロインが凌辱されているのが激熱かもしれない。「転生」に伴うバカバカしさを回避したり利用したりできていたのだろうか。

http://suliruku.blogspot.com/2012/03/blog-post_7742.html

 

 

 

2012年-:ハーメルンの時代

 

 にじファン崩壊後の二次創作はいくつかのサイトにディアスポラした。個人ブログやArcadiaに出戻りしたほか、今では顧みられない「暁」「〇〇を応援•支持するHP」「TINAMI」「アットノベルス」といったサイトにも移転している。「pixiv」にも移転したらしいが、文化が違いすぎやしないか。

 転生オリ主周辺のミームを引き継いだSS投稿サイトのうち現在でも活発に創作が行われているのは、にじファンの避難所として成立した「ハーメルン」(2012年-)のみである。

 ここから2023年までの『ネギま』二次を少しばかり辿ってみたい。原作が二回のアニメ化と一回の実写化で失敗し、勢いを失いながら完結した後、二次創作者は何を思い何を為したか。

 

 

【完結】しゅらばらばらばら【ネギま オリ主 転生 最強】

http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=35534&n=0&count=1#kiji

【完結】しゅらばらばらばら━斬り増し版━

https://syosetu.org/novel/6187/

 にじファン崩壊後の2012年10月からArcadiaで連載された作品。私が『ネギま』二次を読む前から名前だけはしばしば聞いており、妙な存在感を感じていた。

 中二病エッセンスの混じる独自の文体を持っており、作家性が前面に出ている。「一次創作より二次創作の方が読んでもらえるから」という理由で二次創作をやっている、腕に覚えがあるタイプの作家だろう。エゴの強さから作品評が絶賛と酷評に二分されるのも頷ける。

 「斬る」「人間は完結してしまえる」といった言葉の運び、読点の多用、主人公の頭の悪さを自覚した訥朴とした口調。かなりクサいのだが一方でクサさを躱していて、普通に文章が上手いと思う。

 この作品には多くの「敢えて」が見られる。転生設定がほぼ活かされないのに一応転生オリ主――おそらく「お気楽最強チートハーレム転生オリ主」や「中二系最強主人公」を横目に見た主人公設定。内容的には一次創作か『Fate/』二次でやった方が絶対良いのに、ギャップを狙っての『ネギま』二次。「ハーレム」も「萌え」も使わない。キャラは魅力的に描写されるが、原作キャラの再解釈としてというよりオリキャラとしてに近い。

 「鬱展開」や「尊厳凌辱」はいかにもこの時代らしい。今だったら「曇らせ」くらいマイルド化する。

 この作者はまた、「敢えて」普通地雷とされる「転生オリ主別世界渡り歩き」をやっている。

魔法狂気 マジキチ☆なのは

https://syosetu.org/novel/158329/

臓物ぶちまけて死にかけの侍を勇者として召喚してしまった件について

https://syosetu.org/novel/170714/

 

 

転生者についての考察

https://syosetu.org/novel/961/

ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた

https://syosetu.org/novel/4911/

 2012-13年に「にじファン」移転組に混ざって「ハーメルン」で連載を開始した作品たち。

 『転生者についての考察』は『ネギえもん』の作者が書いたチート能力転生者が複数登場する転生メタ系。時代がかっているが見た目よりは手堅い。

 『真面目に妄想』は膨大なパロディを仕組んでおり、今読むと元ネタがほぼほぼ分からない。本文の軽薄さは悪くないのに後書きのノリが厳しい。そして『ジョジョ』とのクロスオーバーを交えたオリジナル展開に無理がある。この種の「にじファン」ノリはハーメルンでは忌避され叩かれていた。

 

 

魔王生徒カンピオーネ!

https://syosetu.org/novel/25063/

 2014年連載開始。「ハーメルン」で今一番評価を集めている『ネギま』二次。

 「地雷臭い中二チート最強オリ主をええ感じにポップにまとめる」という作者の作家性や文体で評価されているように見える。同作者の『Fate/』二次である『湖の求道者』(2014-17年)は「ハーメルン」の累計ランキングで16位に入る人気作。昔はもうちょっと上の順位だった。

 

 

セカンド スタート

https://syosetu.org/novel/79127/

 2016年という『ネギま』二次が完全に停滞した時期に投稿されたTS転生オリ主もの。「しみじみと良い」という読書体験を『ネギま』二次でするとは思わなかった。

 転生オリ主ながら原作に寄り添った、ジェントルで治安のよい作風。『ネギま』が「子供」向けに作られたことを優しく見つめるような「大人」の視座がある。言い換えると『ネギま』の「オタク」性を捨象して「少年漫画」として取り上げながら回顧している部分がある。また一方で、『ネギま』二次への視線、転生オリ主の利用は、死したArcadia・にじファンへの弔辞とみなせるだろう。

 原作へのリスペクトとして「アンチ・ヘイト」はしない(悪意を目的にしない)と明言されている。例えば原作主人公ネギが物語冒頭で起こす「くしゃみ暴発下着剥き」は「くしゃみ暴発スカートめくり」に下方修正され、以降のラッキースケベ要素は排除されていた。差別表現修正問題が関わってくるような気もするが、2016年に二次創作で語り直すならそういう処置はしたくなるし、こちらとしてもありがたい。

 オリ主の妹であるオリキャラ「うい」が美味しいキャラに育っている。

 

 

 最近になって『ネギま』二次が復権……とは全く言えないが、力のある新作が集まっているように感じる。

 

 

ネギまスレ

https://syosetu.org/novel/217636/

 ハーメルンで2020年頃から流行っている「掲示板形式」を掛け合わせたもの。京都の町を燃やす作品は名作。

 

 

最低系ちうたん魔改造

https://syosetu.org/novel/144116/

一枚の羽根・長谷川千雨

https://syosetu.org/novel/213943/

███:長谷川千雨は最後の竜の血脈である。

https://syosetu.org/novel/222632/

 各種の千雨魔改造もの。『最後の竜の血脈』が登場したときごく一部の人々の間で「2021年に千雨魔改造!?」と話題になったようだ。

 

 

【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ

https://syosetu.org/novel/281405/

 Arcadiaの『ゼロの使い魔』二次創作に『わたしのかんがえたかっこいいるいずさま(ルイズ魔改造)(更新停止)』(2008年-、PV120万)という作品があり、その作者が2022年に書いた転生オリ主もの。前世女の女オリ主なのが『ネギま』二次としてはやや珍しい。オリ主の容姿設定はとあるソシャゲのキャラを借りている。TSスタンスは「恋愛書くのが面倒くさい」と「ヒロインとキャッキャウフフしたい」の中間あたり。

 多重クロスをかつての多重クロスもののパロディとして提供するようなところがある。転生チートで「スマホ」とか「ソシャゲ」が出てくるのは時代か(これもやや戯画的な描写に見えるが)。軽薄にメタをぶん回すタイプの作品。

 

 

光る風を超えて

https://syosetu.org/novel/283528/

 『ネギま』ではなくその続編『UQ HOLDER!』(2013-22年)の二次創作。『UQ』二次はハーメルンにおいて3作しかない(『UQ』要素を踏まえた『ネギま』二次も10作前後)。原作不人気にも関わらず圧倒的に伸びている作品。作家性、『BLEACH』要素の差し込み方、更新の活発さで評価されているようだ。

 私がそれまでなんとなく避けてきた『ネギま』二次を読もうと思ったのはこの作品に影響されてのことである。読書順がぐちゃぐちゃなのは二次創作読みあるある。

 

 

 

後書き

 

シリーズ「転生オリ主の時代」

 「転生オリ主」の基盤が築かれた2008-2012年を中心にWeb小説や二次創作について考える。

 

1.「転生オリ主」の出現――「憑依」と「オリ主」の落ち合うところで/「トリップ夢主」の方へ - 古い土地

 1995-2008年の二次創作/Web小説史。「転生オリ主」と「トリップ夢主」の形成過程を辿り、その類似性や文化交流の可能性を検討する。

 

2.(この記事)

 『魔法先生ネギま!』二次創作の実作分析を通じた「転生オリ主」にまつわるミームの解析。

 

3.(TBA

 「転生」、「二次創作」、「オタク」のゼロ年代と現在を問う。彼らは本当に「オタク」だったのか。彼らなぜ「二次創作」を読むのか。「転生」の意味と無意味とは。話がデカくなりすぎて出ない可能性高。

 

 やっと、第二弾の記事が出せた……。

 『ネギま』二次を読んでしょうもない記事を書くつもりが、いつの間にか入念な下調べを要する三部作シリーズに膨らんでしまった。割と後悔している。

 次回は理論的考察を行う予定だが、構想がデカすぎて出せるかどうか分からない。機会があればまたお付き合いいただきたい。

 

 

 追記(2023/4/30):第三弾の記事の内容を織り交ぜた第一弾の加筆修正版を書いた。第三弾を別途で出すかは不明。

 

kakuyomu.jp

 

 

 

 

コラムD:いくつかの補足

 

1.

 Arcadiaやにじファンの全盛期を支えた「三大原作」と言っても、「二次創作」シーンだけ考えていると『ネギま』が『なのは』や『ゼロ魔』から半歩ほど格が落ちる印象は拭えない。以下、謎の対立煽り。

 まず、金字塔の不在。『なのは』二次には『紐糸日記』、『ゼロ魔』二次には『ハルケギニア南船北竜』という作品があって、原作を視聴していなくても皆読んでいた(という史観の表明)。しかし『ネギま』二次にそこまで存在感のある作品は、無いと言える。

 次に数。『なのは』二次は本当に多くのゴミから一定数の傑作・良作・奇作を輩出した。『ゼロ魔』と『ネギま』は同数くらいだろう(前者は「あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ」を、後者は「投稿図書」「風牙亭」を考慮)。ただ「今顧みられているか」の指標としてハーメルンの捜索掲示板(2018年-)のスレッド数を調べると、『なのは』249件、『ゼロ魔』72件、『ネギま』35件となる。淋しい*4

 あとは歴史的重要性。『なのは』二次はメタゲームが加速して数々の発明をシーンに提供した。『ゼロ魔』二次からは「NAISEI」(稚拙な「内政」ものの揶揄)やファンタジー異世界が「なろう」に受け継がれた。今回この記事を書く過程で知れてよかったのは、『ネギま』二次が「(原作主人公アンチを背景とした)オリ主の普及」に大きく貢献していたことである。一方で、「それって個人サイトの時代の出来事でしょ? Arcadia以後は?」という声がしないでもない。一応、にじファンの累計総合ランキングだと100件中31件が『ネギま』二次で最多だったらしい*5。それで金字塔が生まれないって……。

 

2.

 今回名作の列挙は意図しなかった。当時の人気作を中心に観察するというコンセプトと、あとは単純に読書量が足りていないため。読める『ネギま』二次を探している方は[reference]を参照。

 諸事情で本文に入れなかった作品のうち、私が素直に面白いと感じたものを紹介する。

 

【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様

https://syosetu.org/novel/103070/

 『テニスの王子様』がどうしようもなく面白いからこのクロスオーバーも面白いのだろう。カプ廚著しいのが個人的に難点。

 

普通の先生が頑張ります

http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=akamatu&all=25786&n=0&count=1

 魔法を知らない一般人のオリキャラ先生が主人公。この設定がまず珍しい。そしてポルノとして出来がいい。(男性)読者を気持ちよくヨイショしてくれる。魔法使いアンチは常に「エヴァンジェリン」の語りとして差し込んでいて無理がなく、日常描写がメインなのにたまの戦闘描写が上手い。冗長なのは良くもあり悪くもある。ナデポは毎回笑ってしまう。

 

 自分と似た感性の信頼できるレビュワーは貴重だ。私の読み方もだいぶ稚拙だったり歪んだりしているので、どれほど参考になるかは分からない。

 

3.

 実はArcadiaで一番PVが多い『ネギま』の二次創作は、『ネギま!! 元一般人の生き方。』(PV240万)ではなく、『ひかげ荘にようこそ(ネギまでオリ主)』(2013年-、PV325万)という作品になる。次に『ヨコアスR(ネギま×GS)』(2009年-、PV260万)。これらは「XXX」版に隔離された成人向け二次創作だ。

 ついでにハーメルンの成人向け『ネギま』二次を探したところ、タイトルを見て爆笑したものがあったが、「人のセックスを笑うな」の理念に基づき公開は差し控える。

 

 

 

[reference]

 

ネギま』の二次創作が体系的に紹介されているもの

 

【不特定】最近ハマったので名作を教えてほしい

https://syosetu.org/?mode=seek_view&thread_id=38044

ハーメルンの捜索スレ、2023年。

 

【不特定】ネギまSS 完結作品

http://www.mai-net.net/bbs/sss/sss.php?act=dump&cate=akamatu&all=125348&n=0

Arcadiaの捜索スレ、2016年。

 

ネット小説更新チェック

http://newnvs.ddo.jp/newnvs/ranking/ar_rank.php?gr=3&li=50

Arcadiaの作品を擬似的にランキング化する外部サイト。

 

目次&簡易紹介【魔法先生ネギま!

https://noppara.exblog.jp/13893228/

個人サイトの時代から二次創作を紹介している個人サイト。好意的な評だがそれでも治安が悪い。評は信頼できない。

 

ネギま! SSまとめ】オススメの名作、クロス、二次創作小説

http://www.0en-game.com/free/ss-negima.htm

魔改造千雨もの、および『GS美神』とのクロスオーバーについて詳しい。評は信頼できない。

 

千雨魔改造SSリスト

http://keijyuen.blog.fc2.com/blog-entry-2141.html

 

 

作品が掲載されているサイト

 

ハーメルン

原作:魔法先生ネギま! - ハーメルン

 

Arcadia

http://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=list&cate=akamatu&page=1

 

投稿図書

http://toukoutosyo.net/

 

〇〇を応援・支持するサイト

http://oowoouensizi.xsrv.jp/02/01.html

 

 

 

*1:エロコメを描くにあたり、二次性徴前の少年を当事者とすることで原作者赤松健は脱臭を図っていた(消しきれなかったけど)。これは「おねショタ」の論理と同根である。「萌え」と共に「脱臭」「去勢以前」こそ、ソシャゲにまで通用する現代的なハーレムに必須の要素であることを、赤松健は感じ取っていたのかもしれない。

*2:正確には「小説家になろう」に投稿された二次創作を閲覧するサイトこそが「にじファン」だった。ちなみに一次創作を閲覧するのが「小説を読もう!」であり、さらに兄妹サイトとして「ノクターンノベルズ」や「ムーンライトノベルズ」が存在する。

*3:ファイアーエムブレム 新?紋章の謎 〜2人の選ばれし若者達〜』https://w.atwiki.jp/nijifan/pages/16.html 

*4:ちなみに他の原作も調べてみると次のようになった:『ウマ娘』392件、『IS』580件、『恋姫』59件、『エヴァ』59件、『よう実』116件、『DxD』348件、『マヴラヴ』25件、『ハンタ』86件、『オバロ』266件、『呪術』224件、『お兄様』134件、『ポケモン』331件、『艦これ』211件、『SAO』186件。

*5:https://ncode.syosetu.com/n8784ie/3/