古い土地

暗い穴

2024年2月の時オカ・ムジュラRTAニュース:Ganonfloor(ガノンフロア)続報、4つ目の1st cycle skip、いろんなWrong Warp

見切り発車で現在進行形の出来事をまとめていきます。 前回のあらすじ www.youtube.com wagaizumo.hatenablog.com automaton-media.com Ganonfloor(ガノンフロア)というグリッチの発見により、1月下旬の10日間でSRM禁止のガノン討伐RTA(Defeat Ganon no S…

詩をよむそれはくるしい 5:塚本邦雄

塚本邦雄(1920-2008年)は、第二次大戦後の前衛短歌運動の旗手としてよく知られる。 きっかけは、戦後まもなく歌壇・俳壇に対して突きつけられた「第二芸術論」(1946年)だった。これは短歌型文学の前近代性──日本的抒情、表現の狭小、「何を」より「誰が…

中原中也という現象【詩を読まないのでとても楽しい】

大岡昇平(編)『中原中也詩集』岩波文庫、1981年 これを読んだ。良さが分からなかった。 北川透『中原中也論集成』思潮社、2007年 困ったのでこれを流し読んだ。おおむね説得的な議論だった。だが1935年生まれの北川透が、なぜ1968-2007年の間に700ページ分…

日本の狼(犬)は月に吠えたか:萩原朔太郎『月に吠える』と狼の文化史

萩原朔太郎の第1詩集『月に吠える』(1917年)は、大正口語自由詩を代表する作品としてよく知られる。 この詩集に頻出するモチーフの1つが、タイトルにもなっている「月に吠える犬」「病める犬」だ。 月に吠える犬は、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである…

2024年1月の時オカRTAニュース:Ganonfloor(ガノンフロア)、SRMカテゴリの分割、500ドルの懸賞金

激動っぽいのでまとめました。SRM(Stale Reference Manipulation)については発見から4年経って流石に皆慣れたと思うので既知とします*1。 2024年1月に起こっていないことを含みます。 *1:とはいえ技術的細部が重い。必要なら次を参照。 【RTA】ゼルダの伝…

2023年のムジュラRTAニュース:2つの1st cycle skip、Any% unrestricted、Any% NMG

2年前、『ムジュラの仮面』はACE(任意コード実行)によって最初の3日間だけでクリアが可能になった。 wagaizumo.hatenablog.com 「1st cycle skip」とは、チュートリアル区間と呼ばれる最初の3日間で人間リンク状態になること。これはムジュラ界隈の長年の…

なろう批評6:エロ、いくつかの

一番面白い詩より一番面白いポルノの方が面白い、とは誰の言だったか。 ともかく最近は詩とWebポルノ小説を読んでいて、今回はポルノの方で面白かったものを何点か紹介したい。

日記:「パターン化された”エモ”」一周年を記念して/安藤元雄の詩

もうパターン化された“エモ”気持ち悪すぎるんだよ、純喫茶でクリームソーダ、フィルムカメラで街を撮る、薄暗い夜明け、自堕落な生活、アルコール、古着屋、名画座、ミニシアター、硬いプリン、もう全部飽きた 面白くない https://x.com/_capsella_/status/1…

ポートフォリオ

χ

https://mynavi-creator.jp/knowhow/article/how-to-make-portfolios 今回はこれにならってポートフォリオを作ります。面倒なのでそういう前置きもやめて「古い土地」の記事紹介をしていきます。

劇としての(二次創作)

歌は、詩よりもずっと劇に近い。 (サイモン・フリス『サウンドの力』1981年) 全ての詩は劇をめざし、全ての劇は詩をめざす。 (T. S. エリオット『批評選集』1932年) 「劇」に関する2つの言及をきっかけとした、5つの断片・エッセイ。 劇としてのSCP 劇…

日本近代詩史の裏ルート:亀井俊介『日本近代詩の成立』

抜群に面白い日本詩史の本があったので、読書メモ代わりに紹介しようと思う。 www.amazon.co.jp 亀井俊介『日本近代詩の成立』南雲堂、2016年 亀井俊介(1932-2023年)は『アメリカン・ヒーローの系譜』や『対訳 ディキンソン詩集』などで知られる、比較文学…

T. S. エリオット『荒地』登場人物最強議論スレ(強さランキング)

以下、独断と偏見に基づきエリオット『荒地』(1922年)の登場人物で誰が一番強いかを決める。ただし一般人レベルのDランクとそれ未満のEランクは列挙していたらキリがないので、ある程度枝刈りした。 和訳は基本的に岩崎宗次訳『荒地』(岩波書店、2010年)…

補篇:貞操逆転・短歌・その他の観察

A. 一行はミニシアターに入ると、受付の鬼が「バグダッド・カフェあるよ(笑)」と言いました。 エモあるよ(笑)は「もう見飽きたんだよな(笑)」と言いました。 一行はシアターへ入り、バグダッド・カフェを鑑賞しました。 エモあるよ(笑)|惑星ソラリ…

貞操逆転・短歌・その他の観察

1. 貞操逆転 すばらしい あ 鳥だ机を撫でるゆにゔぁーさるの鳥を捨て塔の方へ (31文字に)

日記:音楽批評について/高橋徹也について/活動報告

最近、こういうサイトを作った*1。 comonmusic.com 発端は「日本で唯一の、ポップス専門誌。」を標榜する怪しげな同人雑誌『白旗』である。これは2022年12月に発刊した出来立てほやほやの雑誌で、縁あって私は創刊号に「ピチカート・ファイヴと幻想の廃墟」…

HACHIMAN「おれが今日 ここに来たのは……」[このSSの続きを読む]

1:以下、名無しが深夜にお送りします HACHIMAN「 おれが今日 ここに来たのは 偶然が重なった結果というべきで なにも証しがあったからではない ただ毎夕 鳥たちの喃語に耳を傾け 河底をあるく幾千の死馬の群れを率いたおれらであってみれば やはり単なる偶…

三輪・神保・伊達『ソリトンの数理』文脈解説ノート

どうしてこれが入門書ってことになっているんだ。 はじめに 三輪哲二・神保道夫・伊達悦郎『ソリトンの数理』岩波書店、2007年 T. Miwa, M. Jimbo, E. Date, M. Reid, “Solitons: Differential equations, symmetries, and infinite-dimensional algebras”, …

可積分系に関する補足:ソリトン方程式の一般解と特殊解、可積分系としての共形場理論の謎

wagaizumo.hatenablog.com wagaizumo.hatenablog.com 上の記事から漏れたこと、あるいはその後勉強して気になったことを寄せ集めた。随時更新予定。ただし現在進行形で勉強しているので、今後内容がガラリと変わる可能性がある。 KdV方程式の一般解 KP方程式…

量子群勉強ノート(教科書・参考文献集)

wagaizumo.hatenablog.com wagaizumo.hatenablog.com wagaizumo.hatenablog.com ようやく量子群について勉強することができる。12000文字。 量子化という病:非可換幾何学の夢 文献A:量子群の前に読むべき表現論の教科書 文献B:日本語で読める量子群の教科…

可積分系の歴史:完全に解くことの系譜

私は論文 [6] を書いた後,この分野を離れました.お話ししたことはそこまでの歴史です.そしてその後もたくさんの歴史がありました.大変面白いことがたくさん起こりまして,それは東京で開かれた会議で見ることができました.しかし,あれは本当にエキサイ…

表現論の歴史:対称性の数学

リーマン対称空間の不連続群論では 100 年以上にわたって広く深く研究が発展してきたが,それとは対照的に,1980 年代当時は非リーマン等質空間の不連続群論に興味を示す研究者は殆どおらず,孤独ではあったが何をやっても新しい発見になった. (小林俊行『…

数学の歴史

耳は少しずつ形作られてゆく。三世代か四世代の間に、ある民族の器官が変わってしまうのだ。今から150年も経てば、あなたはきっと私が正しいことが分かるでしょう。 (ヴォルテール、1735年) 本稿は数学史を12000文字程度で概説したものである。あまり具体…

エリック・ドルフィー生誕95周年メモリアルバーベキュー

そういうアレ*1が流行ったときに作った画像です。俺からJazzをとったら何が残る――。 エリック・ドルフィーは大恐慌の前年1928年に生まれました。幼少期、ポピュラー・ミュージックとしてスウィング・ジャズを摂取しながら、地元のオーケストラでクラリネット…

日記 現代ジャズの勉強① Mark Turner

日本ではYOASOBIの〈アイドル〉が、そして〈アイドル〉論が流行っているそうです*1。英語圏への〈アイドル〉進出。 しかしアメリカには……マーク・ターナーがいる!!!!!! *1:『『アイドル』の異様さの評価』の異様さの評価 ~『アイドル』のラップパート…

読書メモ:増田聡『聴衆をつくる』

増田聡『聴衆をつくる』(青土社、2006年) www.amazon.co.jp 音楽批評、というよりも「音楽批評」批評の本。 「ポピュラーミュージックを学問の対象として初めて扱ったテオドール・アドルノは、聴くことの研究を標榜して聴く人を研究していないか?」(第一…

放棄稿:『可愛くてごめん』が流行った理由は? 調べてみました!

結論から言うと、贖罪思想とメシア的なものへの祈りがよく描かれているからのようです。 www.youtube.com 以下、諸々の理由で頓挫したテクストを公開する。教訓は、「勢いで書ききるかよく調べてから書け」だ。本文4600文字。 そのうち「私たちは《キリスト…

旧約聖書の編集史と間テクスト性について(K.シュミート『旧約聖書文学史入門』)

はじめに 『旧約聖書』(The Old Testament)あるいは『ヘブライ語聖書』と今日呼ばれるテクスト群*1。その「非神学」的な批評研究は、スピノザ(1632-1677)などの先駆的な仕事を経て、18世紀啓蒙の時代に始まったという*2。 いわゆる「モーセ五書」(創世…

日記 最近書いた/読んだ/聴いたもの

最近書いたもの ここ一週間はずっと「小説家になろう」「カクヨム」向けに四万文字の論考を書いていた。 kakuyomu.jp 無から生成したわけではなく、次のブログ記事を下敷きにしている。 「転生オリ主」の出現――「憑依」と「オリ主」の落ち合うところで/「ト…

読書メモ:後藤護『黒人音楽史 奇想の宇宙』

暗黒批評……僕のやってることですよ(笑)。ただのキャッチフレーズなんですよね。もともとゴシック・ロマンスやフィルム・ノワールが凄い好きでした。それを日本語にすると、暗黒小説や暗黒映画になるらしいと。ああ暗黒舞踏もあるなとか気づき始める。暗黒…

2023年に読む『魔法先生ネギま!』二次創作(後編)

引き続き『ネギま』の二次創作(からWeb二次創作シーン)について考えよう。 <前| wagaizumo.hatenablog.com コラムC:『ネギま』二次固有の事情 2010-2012年:にじファンの時代 2012年-:ハーメルンの時代 後書き コラムD:いくつかの補足 [reference] …