Chick Corea - Light as a Feather
ここ1か月、Light as a Feather しか聞いていない。1日2回聞いている。
オラといえばLight as a Feather、Light as a Featherといえばオラだっぺや。
今の気分的には Return to Forever よりも断然こっち。1曲が短くてポップなのが良い。
Stanley Clark になりてぇ~~~。
ぴーなた - アンタに言ってんの!!!
エロすぎる!!!(キャラデザが)
SVではなくUTAU版の重音テトを使っているのはポスト原口沙輔ということなのだろう。調声がうまい。音楽関連のAIで明確に進歩を感じるのが合成音声回りだけというのはかなり寂しい気がするが。
以下、意図せずAIに関する言及が多くなっている。食傷気味の人は注意。
AI小説の文体について
何の因果か、最近またWeb小説を漁っている。気持ちとしては罰に近い。
すると、共通の文体──体言止めや文章を短く切る癖──が様々なジャンルで出てくることに気づいた。要するにAI利用である。
素直にうなずき、バスクが去るのを見送る。
それから俺は、自分の部屋とは逆の方向へ歩き出した。
使用人通路の先。倉庫棟。
前世で中小企業を回していた俺は知っている。
帳簿をいじる人間は、現場の痕跡までは消しきれない。
数字は嘘をつく。
だが、物はもっと不器用だ。
このように、素のChatGPT文体とはまた違う特徴がある。どのサービスをどう使うとこの手の文体が発生するのだろうか。
AIによる文体の均一化は面白い現象だと思う。直近だと日本語キーボード・予測変換が漢字の利用方法を変えたように。とはいえ、「ちゃんとやれ」とは思う。可能であれば Light as a Feather くらいちゃんとやってほしい。
以下、発見したものを列挙する。
- 『45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する』
- AIで本文執筆の負荷を下げているのに順当につまらないと「ちゃんとやれ」と思う。
- 『もし、社畜が異世界の第三王子に転生したら【連載版】』
- これは今の年間総合2位だが、AI利用に収まらないスカッとジャパンのすごみがある。好ましくはない。追放ざまぁとか復讐譚の快楽回路を私は欠いている。
- 『鶴が恩返ししないんだが』
- 7年越しに完結したと思ったら、直近の更新が全部AI利用だった。初期の文章を読み込ませればそっちの文体でAIは書いてくれると思うのだが……。
- 『魔法科世界の術式蒐集者』
- 二次創作でもこの文体が出てきてびっくりした。
- 『綾小路清隆が育ったのがホワイトルームじゃなくて白木屋だったら』
- AIポン出し文体で面白くなるとすれば、こういう異常シチュエーションギャグだと思う。アイディアがある。
なろうでもAI利用状況は公開される予定らしい。出版となると著作権の法務が関わってくるので。
「文体論」ということで作品の記憶や詩人の入場の話*1をしようと思ったが、こじつける元気がないのでやめた。
数学の組み合わせ論とAI
今年に入って、ポール・エルデシュの残した1200の問題が、最先端モデルのLLMによって次々に解かれている。ベンチマークと化している気配もある。
2026年5月、OpenAIによってunit distance problemという有名問題が否定的に解決されてしまった*2。もともと定理の主張は理系の大学一年生ならわかるが、今回の証明は数学科の数論系の大学4年~修士1年ならわかる。
unit distance problem (2026/5/21)
- https://cdn.openai.com/pdf/74c24085-19b0-4534-9c90-465b8e29ad73/unit-distance-proof.pdf
- 元論文
- [2605.20695] Remarks on the disproof of the unit distance conjecture
- 人間の注釈
- [2605.20579] An explicit lower bound for the unit distance problem
- 明示的な下界の構成
- Erdős unit distance exponent
- 現在の明示的下界
- https://x.com/i/status/2057485504304521627
- 図示
証明の核となるのは「類体塔を登って素数を完全分解したものを格子にうつす」という比較的シンプルなアイディアだ。代数的整数論が組み合わせ論にこう応用されるのは素人目には驚きだが、一応エルデシュ自身も代数的整数論を利用していたようで、結構歴史のある応用らしい。とはいえ、我々の歴史において今回の証明はAIが初めて見つけた*3。
そして、この証明は他の有名問題の否定的解決にも波及している。以下は2026/6/2時点のリストなので、今後もう少し増えるかもしれない。
sum-product problem (2026/5/28)
Elkes-Ronyai problem (2026/6/1)
- Another one bites the dust: the Elekes-Ronyai problem – Cosmin Pohoata
- [1601.06404] A survey of Elekes-Rónyai-type problems
- 背景知識
現状のAIは、圧倒的な手数を持ち、具体的計算がずば抜けている。そのため道具立てが比較的単純な組み合わせ論(のうち、具体的計算で何とかなる問題)が得意なのは頷ける。
一方で、計算力と比べると抽象的な把握がやや苦手な傾向にある。もちろんこれは現段階の話であり、2025年7月にIMO金メダルで驚いていたことを思い出せば、今後どうなるかは不透明だ。
抽象的な理論(たとえば同一視をしまくる理論)は自然言語による推論に限界があるので、できればLeanなどの定理証明支援系で形式化したい。したいのだが、適切な形式化がすこぶる面倒なことが多い。ここは明確な障壁になるだろう*4。
今後の可能性
- α. 将棋と同様に、5年後にはあらゆる場面で人間の数学はAIに勝てなくなっている。Higher Topos Theory などのゴリゴリ抽象論もAIがどんどん構築。
- β. 抽象論よりも具体論のほうが圧倒的に得意というAIの特性が変わらず、数学全体が具体論の方に引っ張られる。現代数学の最先端が抽象論すぎるのを是正する。
- γ. 数学が天文学のように大規模プロジェクトの学問になる。現状すでにマネーゲームにはなっている(unit distance problemの証明には1000ドルかかっていないらしいが、成功の裏には無数の失敗がある)。
- δ. あと2年程度でAIバブルが弾け、後には難しすぎる具体論(完全数の無限性とか)と無味乾燥な抽象論(標数pでの特異点解消とか)しか残らない。
ところで、2026年のフィールズ賞は7月に発表予定である。
フィールズ賞候補者として有力なのは
— せきゅーん (@integers_blog) 2026年6月2日
Hong Wang
Jacob Tsimerman
Jack Thorne
とからしいけど、他にもDimitrovとかSawinとかたくさん候補がいる中に
Javier Fresán
がいた。Gil-FresánのFresánさんってそんな若かったのか。
有力候補は驚きのないメンツが並んでいるが、4年後8年後はどうなっていることやら。
*1:「作品たちは何を記憶しているだろう? 作者をだろうか? そんなはずはありえまい。作品におぼえていてもらった作者などありえたはずがない。だが、何か別のものを記憶していないはずもまたありえない。自分自身をか? いや、この答えは矛盾している。はじまりをか? 自分のはじまりを記憶の彼方へ消し捨てたときはじめて作品ははじまるのではないか。私が最初にいいたいのはそのような記憶でもない。作品はかれ固有のある記憶によってはじまる。自分がいなかったときの記憶によって。作品と記憶とのかさなりあいが、そのままで体現しているこのようなずれが、私たちへの、そして作品そのものへの、詩人の入場である」(天沢退二郎『入沢康夫の作品史について』)
*2:正確に言えば、実数体 R の場合に否定的解決されたのであって、整数環 Z の場合は未解決のまま。専門家は整数環 Z の場合はもともとの予想がたぶん成り立つだろうとみている。
*3:ここまで遅れたのは、キーパーツの一つが2019年発表なことが影響しているかもしれない。[1901.04354] Cutting towers of number fields これが本当にキーパーツか、あるいは回避する証明方法もあるのかは、これから検証されていくだろう。
*4: ほかに、①最先端の抽象理論は論文が本当に少ないため適切な事後学習ができない、②(最先端に限らず)高度な理論は専門家の暗黙知で済まされている領域がかなりあり、専門家じゃないと形式化ができない、なども問題になり得る。