古い土地

暗い穴

2024年のRTA個人的まとめ②:フロムゲーその他

前回の続き。

wagaizumo.hatenablog.com

 

 

 

 

 

Elden Ring

※:DLCネタバレに配慮しています。

2024年6月にDLC「Shadow of the Erdtree」が出てから、それ関連のカテゴリがspeedrun.comに新設されるまで3ヶ月もかかった。ゲーム本体のバランス調整が落ち着くまでレギュ制定が難しいとか、DLC込みのAll Remembrancesは長すぎるとか、色々問題があったようだ。とはいえ機を逸した感は否めない。

既存カテゴリ含めてリーダーボードは大きく変わった。チェンソーグリッチやDeload Kill(特定箇所で無限落下しているとボスが勝手に死ぬグリッチ、Any% Zipでのボスの死に方に近い)*1を使ったランが「Unrestricted」に分離されたのだ。このゲームのグリッチ環境は治安が悪いと常々思っていたが、新設された「Restricted」でようやくバランスがとれそうだ Any% Restrictedはナーフ前の霜踏みを使うルート。素でバランス悪いなこのゲーム……。

なおボスの行動を封じるAI BreakはDeload Killと別物であり、Restrictedカテゴリで使ってよい。

 

動かないspeedrun.comの代わりと言っては何だが、7月から8月にかけて計1万ドルの賞金を懸けた「Shadow of the Erdtree All Remembrances Level 1 Speedrun」レースが開催されていた。主催はDistosion2氏*2

 

Any% Glitchlessが40秒更新された。使用武器は猟犬の長牙ではなく「死かき棒」。

針の孔を通すようなガン攻めチャートになっている。神肌の二人は眠り壺を使わずガチる。ギデオン戦がやけにグダっているように見えるが、ここは有効手段がなく突破率20%らしい。またエルデの獣戦の開幕でダウンを取る手段がなくそれだけで長引きそうだが、ある美しい手法によって対処する。

 

 

SEKIRO

ソウル系RTAでおなじみのForce Quit(強制終了)Wrong WarpによってAny%世界記録が18分を切った。チュートリアルエリアから捨て牢方面に向かうことで赤鬼~鬼庭形部~火牛区間を飛ばし、1分の短縮。

「Jimmy skip is the hardest skip in the game」とのこと。隻狼のRTAがまた難しくなってしまった。強制終了を伴わない従来のカテゴリは「Airswim」から「Restricted」に名前を変えている。

他にも捨て牢~七面武者から葦名の底へ向かう孤影衆スキップ(12秒短縮)が見つかったり、PumpKin7氏が7つあるGlitchlessカテゴリの全てで世界記録を保持したり、Wormdog氏もグリッチカテゴリで8冠を取ったりと、今年は隻狼RTAが熱い。

 

 

Shura No Airswimにもアプデが入った。

そもそも変更前のチャートが面白い。仙峯寺マップのはるか下に位置する四猿へのアプローチ*3と獅子猿へのアプローチ(Woo Skip)はここでしか見られない。

更新のきっかけは、「忍具1つだけでProsthetic Swap(忍具切り替えバグ)を起こせる」ことの発見だった。Prosthetic Swapとは忍具Aのモーションで忍具Bを使えるバグで、付随して様々な効果をもたらす。さらにジャンプ中鉤縄を使いながらProsthetic Swapすると、なぜかテレポートしてから鉤縄を飛ばすというGrapple Swap(鉤縄スワップが発動する。このGrapple Swapに中毒死を合わせればエリアを貫通した斜め慣性落下も可能だ。

しかし従来のメインカテゴリRTAにGrapple Swapが組み込まれることはなかった。ネックは2つ目の忍具である。手裏剣はともかく爆竹や仕込み槍といった2つ目の忍具は入手に時間がかかり、短時間で終わるNo Airswimだとペイしない。あと手裏剣も加工にかかる時間を無視できない。

今回、非常に単純なメニューイングによって忍具1つでのGrapple Swapが可能だと判明しため、急遽手裏剣チャートが考案された。結果として1分の短縮。

 

 

Immortal Servance Restrictedが突然2分更新されて驚いた。Force Quitは使ってない。

短縮要素は2つある。そのうち1つはGrapple Swapだ。幻影破戒僧を倒した後Grapple Swap & 中毒死することで変な場所にワープし、水生村起点のAirswimが可能となった。従来は葦名城から頑張って空中遊泳していたので、葦名城~水生村の区間が丸々浮いた形。孤影衆スキップのとき一度死んでいるのはミスではなく体力調整の一環だろう。

Immortal Servance No AirswimがGrapple Swapで更新できるのは自明だが、先にこっちに行ったのが意外。

もう1つの短縮要素は剣聖一心の2ゲージ目(槍聖の1ゲージ目)をスキップするバグだ。発売当初から知られたバグだが未だに再現性が低く、前世界記録では挑戦したものの失敗している。現ルートは追憶ボスを鬼庭形部(勝手に死ぬ)・幻影破戒僧・桜竜の3体しか倒さないため攻撃力が低く、このスキップだけで1分巻いた。

桜竜の乱数は悪いので、一心スキップの安定したセットアップさえ見つかればこの世界記録を抜かすことも出来そうだが……。

 

 

Dark Souls III

いつのまにかどのカテゴリも早くなっている。Pivot Sprintingという駆け足バグの発見(2021年)がまず大きい。Dark Souls 2のタニムランやElden RingのZipなどには及ばないが、ちょうどよい塩梅の加速方法だ。

もう1つは梯子を利用したclippingが各所で次々と見つかり、下方向への移動に強くなったこと。これ抜けるの?という場所でヌルッと落ちてびっくりする。All BossesのDLC 1/2は新しいclippingのおかげでルートが綺麗になった。

他にもTeardropという空中歩行技があり、1つずつならアイテム増殖ができ、Bloodborneの無限大砲やElden Ringのチェンソーグリッチのような攻撃系のぶっこわれバグはない。ソウルシリーズの中で今最もグリッチ環境に恵まれたゲームな気がする。

 

 

Dark Souls II

DS2 never dies, it just slowly and painfully vegetates in the background

DS2は決して死ぬことなく、ただバックグラウンドでゆっくりと苦しそうに植物状態になっているだけだ

(ある走者の言葉、2024/10/18)

 

Chat rules

- no controversial topics, e.g. politics, Dark Souls 2, etc.

https://www.twitch.tv/maarionete/about

 

一応、無印版とSotFS版でそれぞれOld Souls Unrestrictedが更新されている。2023年に見つかったMoon Jumpという滞空時間の長いジャンプ技が更新要素。

 

 

Dark Souls

2024年8月、ダクソ無印版のRTAで猛威を振るっているMoveswap(例:レイピアのダッシュ二段突きモーションを大竜牙に移し替える)がリマスター版でも見つかってしまった。

これで各カテゴリ更新確定……と言いたいところだが、リマスター版はソウル増殖(Quantity Using)が非常に容易で攻撃力がネックになることが少ないため、RTA的にはあまり使い道がない。むしろ移動技が欲しいところだ*4

黒騎士の斧槍一本でボスをしばき回るNo Wrong Warpなら多少の恩恵が得られるだろう 2人の公王でしか使い時がなく、そこでちょうどトントンになると計算されている。ソウル増殖がMoveswapの上位互換すぎる。ほか、赤涙を拾わない=すでに火力過剰と判断されているAny%では当然使い道がない。DLCで最強魔術・闇の飛沫を拾う純魔ルートのAll Bossesは、興味を持った人が物理チャートを組んでいるらしい。ぶっちゃけ無印版チャートの下位互換になると思うが。

 

火力が不足しそうなSL1ではどうか? 巨人の木槌がメインウェポンのSL1 No Wrong Warpはニトあたりで息切れしているから、Moveswap可能性がある。一方、SL1 Any%はボス数が少なく微妙。SL1 All Bossesは呪術→闇の飛沫Spellswapと物理武器を使わないチャートなので採用不可。

2024年に出たSL1 All Bossesの世界記録。2020年の前記録から10分更新。つまり過疎カテ。

武器チェンジだけで敵が止まるAI Breakがいつの間にか開発されていたらしい。

 

無印版SL1 All Bossesも3年ぶりに7分更新されている。巨人の木槌ルート。

 

 

2024年11月にLadder Warpという新技が見つかり、てんやわんやの騒ぎになっている。

ソウルシリーズにおいてLadder Warp (Ladder Storage)は割とおなじみのグリッチだ。「はしごの上り下りモーションをキャンセルするとリスポーン位置がその場に設定され、遠くへ行った後プロロすると梯子の位置まで戻る」という内容である。『Bloodborne』『Dark Souls 3』『Elden Ring』のRTAではしばしば使われる。

だが今回ダクソ1で見つかった*5ものはもっと凶悪だ。保存した座標を別のエリアで使用できる。現在のAny%世界記録では、北の不死院において亡者パリィと梯子掴みを重ねることで座標保存。それを商人との買い物後に解放し(スタミナをゼロにして転ぶモーションを起こす)、鐘のガーゴイルがいる教会近くの上空にワープする。これで24秒の更新。

ものすごいポテンシャルを秘めたグリッチだが、スピードランとの相性は未だ測り切れていない。No Wrong Warpに取り入れたチャートも検討されている(明らかに不正なワープだしレギュで禁止すべき気するが……)。

Ladder Warpを応用すると鐘のガーゴイル戦をスキップできる。ただし、さまざまなグリッチを併用してセーブデータ間で梯子座標を共有する。いわゆる「Least Bosses」*6のボス戦数を減らしたとは言えなさそうだ。

 

 

Armored Core VI

グッドなラン・グッドな解説があったので紹介しておく。当時の世界記録。

この人は現在1時間39分21秒の世界記録を持っている。アプデによる武器ナーフにも負けない。

とはいえspeedrun.comの規模感を見た感じ、AC6のやりこみの主流はやはり対人戦なのだろう。

 

 

Celeste

Any%の世界記録が25分台を切った。

これだけ走者層の厚い短時間カテゴリにもかかわらず、2位との記録に1分近く差がついている。Celeste RTAに稀によくあることだが、おかしいでしょ。

現記録からは全く想像できないが、いずれ24分台も切るのだろうか。

 

TASが発表されていたので紹介。ここ2年で20秒ほどの短縮。

 

 

Animal Well

『Animal Well』は2024年5月に発売されたメトロイドヴァニア系の2Dアクションゲーム。人伝にこのゲームを知り、以来リーダーボードを観察していた。ゲーム本体にタイマー機能が備わっており、スピードラン人口は比較的多い。

これくらいの規模感のインディーゲーっていつまで人々の記憶に残るのだろうか、とふと思った*7。Steamだと『Baba Is You』(2019年)や『The Witness』(2016年)の総レビュー数にはすでに並んでいるので、ゲームジャンルごとの違いはかなりありそうだ

 

 

 

Doom / Doom 2

英語圏でのスピードランの歴史を調べていくと、80年代アーケードゲームの後『Doom』(1993年)コミュニティに行き当たる。FPSゲームの草分けであり、その人気と軽量性から、カーナビ・芝刈り機・妊娠検査キットとあらゆる媒体に移植されている。2024年9月には量子コンピューター版が発表された。

DoomFPSゲーム・ロムハック文化・MOD文化に及ぼした影響力は計り知れない。スピードランの側面に限るならば、プレイヤーのフレームごとの操作データをテキストファイルとしてアウトプットできたことを挙げておきたい。電子メールで1KB程度のデータをやり取りして手元のDoomに読み込ませれば、他人のプレイが視聴可能になる。後のTASVideosでも見られるこの「録画」方法は当時の回線状況において非常に有用だった。

Windows2000との衝突でゼロ年代に一度衰退する(他のゲームならRTAが勃興した時期!)など面白い話が多い。興味があれば次を参照。

 

2024年に入って『Doom 2』最初のステージのRTAが4秒台を記録した。5秒台に辿り着いたのは1998年のことであり、26年ぶりの快挙。

 

 

*1:Zipなしチェンソーグリッチありの状況だとチェンソーで薙ぎ払った方が早いのでRTAではあまり見なかった。例:Elden Ring - Morgott Deload Kill (Old Patch) - YouTube

*2:Distorsion2氏は2023年の「The Streamer Awards」の「Best Speedrun Streamer」部門にノミネートされている。The Streamer Awards

氏が最も熱を入れて走ったゲームといえばダクソ2であり、これはもうダクソ2再評価の流れが来ているといって間違いない。

*3:No Airswimで四猿スキップするにはロバートおじさんを倒す必要がある。

*4:全般的に、無印版RTAは火力(ソウル)がネックでリマスター版RTAは移動がネックになる。このあたりの事情に関しては次を参照。

【ダクソ】ダークソウル全ボス撃破RTA の 2020-21 年における進展、およびルート比較 - 古い土地

*5:無印版とリマスター版の両方で可能。

*6:無印版だとガーゴイル/アイアンゴーレム/オンスモ/グウィンの4体、リマスター版だとアイアンゴーレムを抜いた3体。

*7:『Undertale』(2015年)は往時の勢いを失ったと思うが、最近になってSansクロスオーバーものの二次創作をたまにハーメルンで見かける。なぜ?