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2024年のRTA個人的まとめ①:マリオ・ゼルダ

 

今年のまとめです。関連記事:

 

 

 

 

マリオ64

個別スターTASを集めたプレイリストの存在に気が付いた。2021年のWIP以降音沙汰の無い120枚TASの代わりに見ると面白い。もはや通しTASよりプレイリストの方が作る側も見る側も便利じゃないか?

最近はScattershotと呼ばれるAIを用いたTAS更新が相次いでいる。ScattershotはRTAにも影響していて、120枚RTAの1時間37分切り(2023年)を可能とした狂気の50秒短縮技「カーペットレス」は記憶に新しい*1。他にも個別スターRTAはちょくちょくAI発ストラトで更新されている。

ScattershotのRTA利用は、①TASの更新を目的としてAIに探索させたらRTAでも使えそうなルートが見つかる場合と、②既存TAS技の人力化を目的としてAIにセットアップを探索させる場合の2つがある。カーペットレスはまさしく②で見つかった。

 

現在の120枚プレイリストTASは2012年の通しTAS(1時間20分41秒52)と比べ、累計4分ほど短縮しているらしい。「4分も」なのか、「4分しか」なのか。

 

 

120枚RTA現環境のまま1時間36分切りする可能性が示されている。そう、可能性だけなら……。100% RTAには常に無限の勝ち筋と負け筋がある。

 

なんと120枚RTAの世界記録が1時間36分を切った。

成し遂げたのはSuigi氏。16枚RTAで14分35秒(2023/3/22)の世界記録を持ち、「16 star is dead」と叫ばれた男だ。ほか0枚と1枚で世界1位、70枚で世界2位(当時1位)の記録を持つ。120枚以外のカテゴリを制覇した氏は満を持して120枚RTAに挑み始めた。私含め大方の人は「まあ120枚は話が違うだろう」と思っていたのだが……。

they said 120 star was a different type of beast. But I'm also a different type of beast. rawrrr

https://x.com/greensuigi/status/1850079591957745853

1時間37分11秒の記録を7月に出してから3ヶ月の休養を挟み、休養明け2週間でこの記録が出た。驚異のSoB + 2:06である。運・実力・精神力すべてが噛み合わないと120枚の世界記録は出せないことを痛感する。

特に2階(74枚目以降、計測開始から1時間2分時点)に入るまでは前世界記録の方が26秒早いので、後半崩れずに1分巻いたのはかなりポストヒューマンっぽい。いや本当に、ここまで明確に後半に強い人は見たことない気がする。

 

そしてあっという間にマリオ64RTA全冠を成し遂げた。ついでにThe Streamer Aawardsのスピードラン部門にもノミネートした*2

 

 

メモ

 

 

スーパーマリオサンシャイン

Any%の1時間13分切りが15年選手のToobou氏によって達成された。WR historyによると1時間14分切りが2020年6月、1時間15分切りが2016年12月のことで、近年は4年に1分縮むペースらしい。相変わらずハードなゲームのハードなRTAである。

この記録はサンシャインに参入して4年目のinkstar氏に抜かれている。次世代の成長を感じる。

 

2020年に報告されていた任意コード実行(Arbitrary Code Execution, ACE)に動きがあった。TASの発表と、人力で初のランだ。

これによりspeedrun.comのリーダーボードでは通常のAny%が「Any% No ACE」、ACEを使うものは「Any% ACE」と呼称されるようになる。

 

そしてWeegee氏がなぜかAny% ACEを激詰めした。このカテゴリってこんな競技性が高かったんだ。

実のところ氏はかつてAny% No ACEの世界記録(1:14:13, 2019/12/28)を獲っており、サンシャイン走者としても名うての実力者である。ただ5年ぶりに復帰して走るのがこれなんだ、と。

Weegee氏は既存チャートに飽き足りず、プログラミングの勉強を始めたりTAS制作陣を巻き込んだりして、直接クッパ戦に飛べるルートを開拓した。

 

 

メモ

 

 

 

ブレス オブ ザ ワイルド

『知恵のかりもの』(2024年)でも『ティアーズ オブ ザ キングダム』(2023年)でもなく、『ブレワイ』(2017年)の話題。といっても、アイテムを増殖するIST/DIC(2022年、特に攻撃担当の古代矢およびHPリソースの妖精の無限増殖がゲームを変えた)以来大きなグリッチは見つかっていない。この環境でいかにチャートを練り実走を最適化するか?

例えばティアキンから出戻りしたPlayer5氏は、23分のAny%から4時間のAll Shrinesまでのメインカテゴリで世界記録を独占する無双っぷりを見せている*3

Player5氏は全メインカテゴリ制覇を目標に、ついに100%に挑み始めた。ブレワイ発売直後は36時間かかっていた100%だが、2024年に入って世界記録は17分縮み15時間3分36秒となった。

計18時間の休憩時間があり、2日かけて7時間半・7時間半で走れば良いと考えるとなんだか常識的である。それがきわめて動作性の高い3Dアクションゲームで、セットアップが場所ごとに少しずつ異なるWind Bombを優に1000回は決めなければならないことを度外視すれば。

さて、Player5氏はなんだかんだ100%に適応し、2024年10月27-28日に15時間2分16秒の世界記録を樹立した。

これにて全メインカテゴリ制覇の偉業達成……かと思いきや、記録達成の直前にAny%の記録が1秒更新されていた。

たった1秒、されど。アクティヴ走者の多いゲームで全冠はやっぱり難しい。Player5氏の目標は100%の15時間切りとAny%世界奪還の2つだ。

Player5氏は100%の15時間切りを達成。これで満を持してAny%に移行……と思いきや、今度はkurapan氏が100%の世界記録を奪還した。

 

20分のAny%と15時間の100%の2面で防衛・挑戦するの大変すぎ。その後なんやかんやで全冠を達成した。

They call me Player 5/5 because I now have all 5 main board WRs in Breath of the Wild!!!!!

https://x.com/Player5SR/status/1868597081667174843

 

 

 

リンクの冒険』は1987年にファミコン用ソフトとして発売されたゼルダシリーズの2作目。初代『ゼルダの伝説』(1986年)が見下ろし型探索ゲームなら、『リンクの冒険』はフィールドマップを除き横スクロールアクションになっている。『夢を見る島』(1993年)から『知恵のかりもの』(2024年)まで続く見下ろし型と横スクロールの混合は初期2作品があってのものだ。

また『リンクの冒険』におけるリンクの下突きモーションが『スマブラ』シリーズ(1999年~)におけるリンクのジャンプ中↓+A攻撃の祖先になるという奇妙な縁も持っている。冷静に考えると3Dゼルダには真下への剣攻撃がない(強いて言えばとどめのモーション?)。

 

ファミコンアクションゲーのRTAとなると、根本的なチャートは全て開拓済みの感じがする。しかし『リンクの冒険』のAny%は2024年8月に入って突然2分更新された。

さらに12人(アクティブプレイヤーのほぼ全員?)がよってたかって新ルートを走り始めた。この光景がなんか良いなと思ったので記録しておく。

2024/10/16時点のリーダーボード

具体的にどういう経緯で更新に至ったのかはいまいち調べきれていない。解説記事なり動画なりを見つけたら追記する。

 

上で「研究され尽くされていそうな感じがする」と書いたが、Any%に関しては2020年初頭の18分2秒からゆるゆると更新が続いており、むしろホットだ。100% (All keys, 1CC) というおそらく100%系では一番メジャーなカテゴリも、今年1分更新されている。

 

 

神々のトライフォース

Any% No Major Glitchesがいきなり25秒更新されたびっくりした。

ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は1991年にスーパーファミコン用ソフトとして発売された見下ろし型探索アクションゲームだ。ゼルダシリーズ3作目にして2Dゼルダの完成形として名高い。RTAの歴史もきわめて長く、今なお活発に走られている。アクティヴ走者数は70人。

Any% NMGは神トラRTA良かれ悪しかれ代表する花形部門だ。「良かれ」というのは初心者も気軽に走ることができて、昔から今まで人を惹きつけてきたからである。「悪しかれ」というのは、とっくの昔に煮詰まっているからである。世界記録が1時間24分を切ったのが2015年7月のこと(by Xelna, 1:23:55)。1時間23分を切ったのはつい最近2024年1月だったりする(by Eriror, 1:22:56)。9年でやっと1分縮まった。

この不動性は、NMGがレギュ上Glitchlessに近い運用をされていることに起因する。何かバグが見つかってもRestricted Major GlitchesやMajor Glitchesに振り分けられ、NMGでは禁止されるのだ。最上位勢は1万回の試行回数とフレーム単位の短縮を積み重ね、自己ベスト更新を狙い続けている。

 

今回25秒更新されたのは各所でNMG用の新ストラトを開発したことが大きい。短縮幅は数秒からコンマ数秒程度で、どれもハイリスクローリターンっぽい。見ていて新鮮だ。

個人的に引っかかったので記録の真正性についてコメントする。Nola氏はspeedrun.com上だとRTA歴2年の新人だが、実際は神トラRTA歴10年のベテランらしい。いざこざがあってアカウントを1回消したようだ。またアーカイヴは残っていないが記録達成時twitchで配信していた(ゴリゴリのメタルを掛け流しながら)。というわけで信頼してよい。

 

以上の内容は10月頃書いたもので、今(2024/12/17)speedrun.comを見たら記録が消されていた。また垢消ししたっぽい。

気付いたらAny% Restricted Major Glitchesも30秒更新されていたから、これを紹介してお茶を濁しておく。

 

参考:

 

 

4つの剣+

ゼルダの伝説 4つの剣+』(2004年)はステージ選択型かつ複数人プレイ対応という、2Dゼルダ作品の中では異例の形式をしている。世界観は『4つの剣』(2003年)や『ふしぎのぼうし』(2004年)と地続き。グラは『風のタクト』『神々のトライフォース』からの引用が多い。意欲的な作品だが納期の魔物を感じる。

2024年にPickup Clipという汎用性の高いグリッチが見つかり、世界記録が8分縮んだ。

speedrun.comのWR historyは圧巻で、2013年から今までずっとNavi_Lny氏が世界記録を保持し続けている。モデレーターもこの人しかいない。限界集落

 

解説:

 

 

トワイライトプリンセス

フランス語版限定で大砲修理にかかる300ルピーの支払いをキャンセルできるバグが見つかった。フランスのトワプリ攻略サイトにはずっと昔から掲載されていたらしい。

これで最速言語が変わる……かと思いきや、素のテキスト表示が遅いせいでドイツ語版・北米版と同じかわずかに遅いようだ。今年活動している上位勢はみな思い思いのバージョンを使っており、どれが最速言語なのか私は把握できていない。

そうして特に大きな短縮要素のないままAny%が27秒更新された。ちなみにドイツ語版。

この時間走ってSoB + 3:24は結構正気じゃない。トワプリは飛ばせるムービーが多いから操作時間が長いはずなのに。

 

ついでにAll Dungeonsもトワプリ王者のbewildebeest氏によって2分40秒更新されている。北米版、SoB + 3:55(!)。

デスマウンテンからゴロン鉱山に入るときエレベーターに抜けるグリッチが面白いと思った。10年前から知られたEarly Elavatorと、2024年4月に見つかったElavator Escapeの組み合わせらしい。だが見た目に反して17秒しか短縮しない。細々としたチャート変更と操作最適化を積み重ねて3分近く更新している。

 

トワプリのAny%は昔からずっと長い気がする。それはまあ正しいのだが、他の3Dゼルダと比べると別の視点が出てくる。風タクのAny%はバリアスキップ(2019年)が見つかるまで3時間50分かかっていたし、スカウォのAny%もReverse BiTMagic(2019年)が見つかるまで4時間50分かかっていた*4。2019年のトワプリAny%世界記録は2時間54分で今とさほど変わらないが、3Dゼルダの中で比較すると6位中4位(上3つは時オカ・ブレワイ・ムジュラ)で、「長時間Any%の中では最も優秀」くらいの立ち位置だった。

トワプリにもいつか破壊的なバグが見つかる日が来るのだろうか? トワプリについて書くたびにこれを言っている気がする。

 

 

その他ゼルダゲー

ティアーズ オブ ザ キングダム

ティアキンのRTAは今なお盛んだが、問題を2つ抱えている。

①バージョンごとに使えるバグが異なり、必ずしも初期版が有利ではない。そして初期版と最新版の間のバージョンは「近くの人とバージョンをそろえる」機能を使う以外入手する方法がない。2024年に入ってAll Main Quests以外は初期版有利となっており、状況は緩和されつつある。

②必須イベントがブレワイと比べると明らかに長い。最短40分で終わるAny%はそのうち13分がムービー・会話で、2時間40分で終わるAll Dungeonsも神殿数と時間が比例していない。3Dアクションゲーム部分が発売すぐ開拓され尽くした分だけ飛ばせないストーリー・演出が目立ってしまっている。正直、RTAするにはバランスが悪いと思う。グリッチで省略できる見込みも現状かなり薄い*5

Glitchlessは最新版で走れるし相対的にゲームプレイの時間が伸びるので、今後定着するかも。

 

知恵のかりもの

CD-iゼルダシリーズ(1993年)から30年の時を経て、再びゼルダ主人公の作品が発表された。そして発売2-3日でWrong Warpが見つかり、現在のAny%は35分を切った。

知恵かりもティアキンと同様、必須イベントの長さがネックに見える。オープニング~チュートリアル区間が20分と長く、Wrong Warpでダンジョン内に吹っ飛んでもダンジョンクリア後の演出が不可避に長い。RTAというよこしまな遊び方と相性が悪い感じがする。

いずれカットシーンスキップが見つかることを願う。

 

 

・おまけ

2024/12/18からNukie氏が3Dゼルダ7作品の100% RTAを連続して寝ずに行うらしい。死ぬ気? 

Tomorrow I will start, for hopefully the final time, a journey that no one has dared to go on before.

I will become the first Zelda player in the world to 100% all the 3D Zeldas in one session. No sleep, back to back.

Over 10 months since my first attempts with TotK.

<3

https://x.com/nukiedog/status/1868775424714850497

 

 

 

*1:発見当時の記事として次を参照。『スーパーマリオ64』RTAにて“「人力再現ほぼ不可能」を可能にするテク”が提案される。45秒以上のタイム短縮が現実的に - AUTOMATON

人力カーペットレスの試み自体は2020年頃からあり、Scattershot産ストラトが発表される直前には、個別スターRTAボム兵利用カーペットレスを行う走者がいた。

*2:惜しくも受賞ならず。The Streamer Awards 

*3:厳密にはDLC込みのExtendedやバグ制限のRestrictedなどサブカテゴリが多数存在しており、Player5氏はそのうち人が一番多いところを狙って制覇している。

*4:2019年には時オカ・ムジュラのSRMも見つかっている。3Dゼルダ魔の年。

*5:イベントをすっ飛ばして神殿にワープできればよいのだが、Wrong Warp系のバグはブレワイのShrine Coordinate Warpしか知られていない。またティアキンの神殿は同伴NPCがいないと攻略できず、Wrong Warpだけでは詰む可能性がある。