古い土地

暗い穴

狂える母――オースティン『高慢と偏見』論

 

 

結婚はサヴァイヴだ

 

  • 序:愉快な仲間たち(作品紹介)
  • 狂える母
    • ①階級について
    • ②狂気
    • 罪と罰の経済
    • ④家族というコレクティヴ
    • ⑤過剰な自我、卑小な自我
    • ⑥女たちの共同体

 

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「小説家になろう」フェミニズム批評:週間ランキングから結婚について考える

 

 

問:テクスト投稿サイト「小説家になろう」の週間総合ランキング(2022/10/17現在)の20位以内にいくつ「異世界[恋愛]」カテゴリの小説は含まれるか。

答:16個(なお、そのうち12個が「婚約破棄」の要素を持つ)。

https://yomou.syosetu.com/rank/list/type/weekly_total/

 

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空ろなるヒーローたち①:フォークナー『響きと怒り』『アブサロム!』のクエンティン・コンプソン

 

 

 人間が、意味を求めてしまうことの浅ましさ。意味を求めてしまうことの悲しさ。それらはときに、自殺という形態で現れる。

 

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確率変数の「気持ち悪さ」について(幾何と解析の視点から)

 リハビリ用の記事。記事を書くという意味でも数学について書くという意味でも。

 

 統計検定1級に向けて数理統計学を勉強している。

www.kyoritsu-pub.co.jp

 

 久保川『現代数理統計学の基礎』は現代的で大方よく書けている教科書だと思う(なにより演習問題が200近くありサポートページで解答・補足・擬似テストまで入手できるのがありがたい。統計検定に対してはオーバーパワー気味だとしても)。しかし、確率変数の扱いに戸惑うことがたびたびあった。確率変数の測度論定義や各収束概念の定義が生半可しっかり書かれているがためにかえって、実際の扱いとの間でギャップを感じたのである。この点で煩わされたくないならうまく誤魔化している竹村『現代数理統計学』の方がよいのかもしれない。

 ともかく、自分なりに「確率変数」の「気持ち悪さ」の原因を特定して言語化したので、ここに紹介する。自分の専門に引き寄せて書いているため、似た問題を抱えた方の躓きの石をどれほど取り除けるかは不明である。

 

 「確率変数の扱いが気持ち悪い」という感覚は、ある程度数学の訓練を受けてから数理統計学(ないし確率論)を勉強した方は多かれ少なかれ持つのかもしれない。次の記事は大いに参考にさせていただいた。

 

m-hiyama.hatenablog.com

 

 今回進むのは圏論型理論の道ではなく、ミハイル・グロモフ*1がいうところの「幾何」と「解析」の道である。「確率空間  \Omega 上の解析」だと思っていたものが「 \mathbb{R} 上の幾何」だと判明し、最終的には「 \mathbb{R} 上の解析」となる。

 

*1:偉大な数学者。粗幾何からシンプレクティック幾何、幾何学群論から偏微分方程式まで。フィールズ賞もらってないのが不思議なぐらいだが、アーベル賞は受賞している。

ミハイル・グロモフ - Wikipedia

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「生命って負けヒロインだから」

 

 負けヒロインとはなにか。

おれは指を立てて 流れていく巻雲を

とめようとしたがだめだつた

――入沢康夫「外出」『夏至の火』より

 

 こういうものに違いない。

 

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Analysis of Eric Dolphy ――エリック・ドルフィーの楽理的分析 part 2 〔作曲編〕

 

じゃあ、行こうか、きみとぼくと、

薄暮が空に広がって

手術台の上の麻酔患者のように見えるとき。

――T. S. エリオット『J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌』(1910-1911) 岩崎訳

 

我々はそれと知らずに、それを行う

――出展不明

 

 

<前|

wagaizumo.hatenablog.com

 

 

 今回はコンポーザーとしてのドルフィーを研究する。音源については次のプレイリストを参照。

 

open.spotify.com

 

  • 前提と約束
  • いくつかの曲分析
    • 「Les」 from 『Outward Bound』1960
    • 「Prophet」 from 『Live at the Five Spot vol.1』1961
    • 「Miss Ann」 from『Far Cry』1960
    • 「Miles' Mode」 from『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』1961
    • 「Brazilia」 from『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』1961
  • 付録:アレンジャーとしてのドルフィー/クラシックへの接近

 

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